2024年の「SDGsアカデミー」がついに完結。多文化共生をテーマにしたブラジル人キッズとの交流は、最高の笑顔に包まれた。
12月1日に行われたプレミアリーグWESTの東福岡戦、その試合後に「SDGsアカデミー」の完結編となるイベントが行われ、名古屋ユースが一体となってブラジル人キッズとの交流に花を咲かせた。事前に行なわれた事務局のセッションから数えれば半年、8月の選手たちのインプットセッションからは4ヵ月半というスパンで練り上げ、計画されてきたこの活動の集大成は、秋晴れの好天にも恵まれ大成功といっていいフィナーレを迎えた。
東福岡戦の1時間後から始まったSDGsアカデミーの「在留ブラジルキッズプロジェクト」は選手たちと各協力企業やグランパスのスタッフといった大人たちの知恵の出し合いの中で、いろいろな形での交流を図ろうということで一致。最終的には試合後にまずはブラジル料理での食事会で歓談し、その後試合会場の環境を使ってミニサッカーや運動会を実施することで計画がまとまっていた。試合に出場した選手、していない選手の分け隔てなく試合後の準備は整えられ、食事会を行なう部屋に集まったブラジル人キッズは今や遅しと開会を待つばかり。
松嶋好誠、伊藤ケン、鶴田周の3人が司会となって食事会はスタート。テーブルにはパステルなど4種類のブラジル料理の軽食がこれでもかと配られ、選手と子どもたちは楽しく食事をしながら会話を重ねていた。興味深かったのは各テーブルに準備された選手直筆の簡単なポルトガル語のトークテーマが書かれたプリントだ。このプロジェクト自体は3年生と2年生によって進められてきたが、当日は1年生も参加しており、このプロジェクトの経緯を知らない選手たちがこれを使ってコミュニケーションを進めていたのである。多文化共生について考える中で大きな課題であった言語の壁について、最初の壁を打ち破るツールとして準備した彼らの意図がしっかり出ていたわけだ。
お腹がいっぱいになったら外に出て、運動である。スポーツ日和となったこの日、豊田市運動公園の陸上競技場で行われたのは運動会とミニサッカー。運動会は障害物競走のような競技と玉入れ、そして綱引きがあり、ピッチ内でのミニサッカーと交互にグループを入れ替えつつ行なうあたりのスケジューリングも万全。子どもたちは目を輝かせながら身体を動かし、選手たちと言葉やスキンシップも通じてとても仲良くなっていた。
あっと言う間に2時間弱のイベント予定時間が過ぎ、記念撮影をして会は終了。しかし会の間も会の後も、選手は子どもたちとのコミュニケーションを取り続け、まるで家族や仲間のようなコミュニティを形成していた。このプロジェクトを通して最近のプレミアリーグのホームゲームにはブラジル人ファミリーたちの来場もちらほらと見かけるようになり、トヨタスポーツセンターにほど近い保見エリアとの交流がさらに活発になればこのプロジェクトもさらにやった甲斐があるというもの。青木正宗は「めっちゃ楽しかった」と笑顔を見せ、「運動会は年1で後輩たちにも続けてもらいたい」と恒例化、恒常化を託した。2024年のSDGsアカデミー、多文化共生プロジェクトはこれで一旦の終わりを告げたが、名古屋アカデミーの“ライフワーク”としての取り組みが誕生したのかもしれない。
〇青木正宗選手
Q:これで今季のSDGsアカデミーが完結しました。今の気分はどうですか。
「いや、もうほんとめちゃくちゃ楽しかったの一言に尽きますね。ほんとに。でも最初は、これちょっとダメだと思ってたんですけどね。たぶん(ブラジル人キッズとの親睦を深めた)運動系の企画がめちゃくちゃハマったんだと思います。それでもうめっちゃ仲良くなれたので。よかったです。ほんとに」
Q:こうしていろいろな大人の力も借りながら、一つひとつ企画を進めていって、考えるは作るようなこの半年間の経験はいかがでしたか。
「いや、ほんとに今回だけじゃなくて、今後にも絶対活きてくる能力を、ほんとに大人の皆さんの力も借りながら自分たちで考えたっていうのは、すごく自分の、今後の自分のためになるなっていう風には思いました」
Q:この活動の中で苦労したところ、頭を使ったところ、気合いが入った部分などは。
「やっぱり企画を考えて、まとめる作業のところで、どうやったらみんながわかりやすく、あんまり長ったらしくてもダメなので、短くわかりやすくイラストとかも使ってまとめるかっていうのがすごく、みんなも頭を使って、自分もすごい考えながらやったところでした。それが今回、一番大変だったところかなって思います」
Q:結果としてこうして新しい仲間、あるいは家族みたいな人たちができたことも、自分の人生に大きなことかなと思いますが。
「ほんとに今回の活動から、こうやって行動に移していくっていう力は絶対に、さっきも言いましたけど、今後の自分の人間性の部分でも絶対活きてくる力だと思うんです。自分はこの後、大学に行く形にはなるんですけど、そのサッカー面でもすごく活きてくる力になったっていう風には感じたんで。これを今後にも活かすっていうことを考えてやっていきたいなっていう風に思います」
Q:アカデミーの後輩にもこうした活動はまた引き継がれていくと思います。彼らにはどんなことを期待しますか。
「いや、今回はこうして運動会をやったんですけど、ブラジル人キッズとの運動会は続けていってほしいなって思います。たぶん高校生のみんなも楽しいし、ブラジル人のちっちゃい子たちも両方楽しいので。みんなが楽しいっていうのが一番ほっこりするし(笑)、良いなって思うので。今後もこの運動会はマジで年1では絶対にやってほしいと思います」
Q:今年のSDGsアカデミーはこうした多文化共生がテーマになりましたが、こうしたことを考える活動を終えてみての総括はいかがですか。
「最初はすごく、SDGsって難しいなって思ってたんですけど、でも意外に、そんな難しく考えすぎずに、ちょっと簡単にというか、もう少しラフな感じで考えることで、こうして自分たちも楽しめて、ブラジル人の子たちも楽しめるっていう風に持っていけたと思います。あんまり堅苦しく、難しいことをするんじゃなくて、こういうラフな感じの方が、遊びながらの学びもあると思います。楽しみながら学べるってことは、たぶん一番記憶にも残ると思うので、そういったことがすごく、自分の中でひとつの学びになったなって思いました」
□イベントの様子(写真)