【U-18レポート】ホーム最終戦は大歓喜のち油断大敵のドロー決着。強さも脆さも彼らの現在地と知る機会に。
■高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第21節
2024年12月1日 11:00 KickOff 豊田市運動公園陸上競技場
名古屋グランパスU-18 1-1 東福岡高校
得点者:82分 杉浦駿吾(名古屋)85分 大坪聖央(東福岡)
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1年が経つのは本当に早く、今季のプレミアリーグWESTのホーム最終節、東福岡を迎えての一戦が12月1日に豊田市運動公園にて行なわれた。22試合で勝点48獲得、優勝という目標に向かって突き進んでいたチームは残念ながらそのどちらも達成ならなかったが、1年間の応援に応えるため、そして3年生にとっては高校ラストのホームゲームということで、絶対に勝って喜びたい試合という気合は十分に感じられる戦いに。だが、勝つためには何が必要かとまたしても問いかけられるような終盤のせめぎ合いに、彼らは自分たちの総合的な実力を思い知らされることにはなってしまった。
90分を通じて、ロングボールが目立つ戦いだった。前半は東福岡の激しいプレッシングとキーマンへのタイトマークが名古屋U-18の自由を奪い、攻め手といえば青木正宗や森壮一朗らDFラインからのフィードがほとんど。それも狙いをもってというよりは、そこしか突破口がないというやや消極的な選択肢であることが多く、大西利都や杉浦駿吾、西森悠斗らの運動量によってそれが攻撃の形にはなっていた一方、やはり単純かつ単発には違いなく、大きな効果を得られることは少なかった。東福岡もまたシュートまで持ち込むことは少なかったために全体としては名古屋のペースに見えていたが、“何か起これば”という攻撃の応酬ではなかなか得点に至るところまではならなかった。
それでも前半はロングボールへの抜け出しやカウンター、右の伊澤翔登の突破が利いていたところもあって数度の決定機を名古屋ユースは演出。43分のコーナーキックでニアに飛び込んだ杉浦のシュート、アディショナルタイムにゴール前のこぼれ球を得たフリーの杉浦のシュートなどは決定的だったが、わずかなところでGKに阻まれ、枠をとらえきれなかった。ここで仕留めきれなかったこともあり、後半は東福岡が押し込む立ち上がりに名古屋は防戦一方に。大部分の時間を自陣で過ごす劣勢に陥ると、試合は一転して東福岡の支配力が強まっていく。
前半は蹴らされていたぶん、攻めのセカンドボール回収への意識が重要だったが、後半は跳ね返した後のセカンドボールをいかに確保できるかへと課題は変遷していく。押し込まれてばかりの展開では前半のように蹴っても飛距離は伸びず、相手の対応も易々としたものが増え、ひたすらに耐えるばかりで20分以上が経過。青木の果敢なオーバーラップや杉浦の単独突破などで打開は図るも多勢に無勢は明らかで、71分になっていよいよ三木隆司監督は交代を決断し、一挙の4枚替えで勝負に出た。西森悠と大西に代えて西森脩斗と神田龍、ボランチを松嶋好誠から八色真人に、左ウイングバックを池間から野中祐吾に替え、陣容の推進力を強化して決勝点を狙っていった。
しかしながら一度崩れた流れはなかなか引き戻せず、ピンチは継続。80分の名古屋ゴール前の混戦を萩裕陽が防いでいなかったらと冷や汗も出るが、東福岡もこの時間帯になればやはり疲労も見え始め、そして82分の先制の場面がやってくる。これも青木の運ぶドリブルによるチャンスメイクから生まれた局面で、相手に阻まれたそのこぼれを拾った杉浦が、強引な仕掛けから右足を振り抜きミドルシュートをネットに突き刺した。ミドルレンジの強烈な一撃はもはや今季の杉浦の代名詞。サポーターに「バモ!」と雄叫び、仲間と喜びを大爆発させ、トドメにカメラに向かって「S」の文字を見せるゴールセレブレーションまで披露したエースは、「こういう時に何ができるかだ」という指揮官の檄にも見事に応え、焦れる展開に大きな風穴を空けてみせた。
残念だったのはその2分後、コーナーキックから東福岡に得点を許し、あの爆発的な歓喜の輪が空転してしまったこと。あと10分ほどをさばききれば3試合ぶりの勝点3が手に入っていたのだが、改めて今季のチームの脆さ、失点の多さの理由を露呈するような終わり方になってしまった。試合はそのまま1-1で引き分け、何とも後味の悪い2024年のホーム最終戦に、「誰かが悪いとかじゃなく、チーム全体の確認不足。まだラスト1つあるんで、その部分でも力をつけていきたい」と杉浦の表情もすぐれなかった。
試合前には恒例となっている3年生全員の個人チャントを聞けたり、病気療養中の富川勇斗の姿を見れたり、試合後にも引き分けながら3年生のホーム最後の勝利のジャンプを見られたりと、メモリアルな出来事の多い試合ではあった。最終節は3位の座を死守すべく、そして1年間を勝利で幕引きすべく、神戸ユースとのアウェイゲームに挑む。「最後の試合が終わった時にサポーターの方々や見てくれている方々が『変わったな』って思ってもらえるぐらいやる」。エース杉浦は決意を語った。最終節、彼らの“オールアウト”が勝利をもぎ取ってくれることを期待する。
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