赤鯱新報

「それぞれの成長速度に応じた最適な試合機会」を存分に活かす圧勝劇。この自信もまたU-18に追い風を吹かせる。【U-18レポート:Jユースカップvsエストレラ姫路】

■2024Jユースカップ 第30回Jリーグユース選手権2ndラウンド14 第2節
2024年10月20日 13:00 KickOff トヨタスポーツセンター第2グラウンド(天然芝)
名古屋グランパスU-18 9-0 エストレラ姫路FC U-18
得点者:8’大見咲新、11’西森脩斗、15’神田龍、40’西森脩斗、45’+2神田龍、54’神田龍、59’西森脩斗、88’石田翔琉、90’平川大翔
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20日に行われたJユースカップ2ndラウンド、エストレラ姫路との戦いをレポートする。15歳から17歳のメンバーに加え、オーバーエイジとして3年生も3人起用できるレギュレーションでは、興味深いスタメン構成にもなった。

「主にU-15~U-17の選手を対象とし、それぞれの成長速度に応じた最適な試合機会を提供する」という目的の大会となったJユースカップは既に1stラウンドが終わり、現在の名古屋ユースは1stラウンドのリーグ下位チームにより再編成された2ndラウンドを戦っている。チームの2戦目となる20日に行われたエストレラ姫路との一戦は、前日にプレミアリーグWESTとプリンスリーグ東海の試合があったことから、その2試合でベンチスタートとなったメンバーが中心のスタメン構成に。キャプテンマークを巻いた西森脩斗の「ここで何かを残すことによって次につながる」という言葉の通り、その悔しさと反骨心が生み出した快勝とも言えた。

オーバーエイジは西森脩斗、中原蒼空、苅米飛和の3人だった。

スタメンはGKに中島眞一郎、3バックは右から水野優人、苅米飛和、鶴田周で、この日はいつもの3-4-3をやや変則的に組んでの中盤より前となっていた模様。ボランチには神谷輝一と、シャドーとの中間といった位置取りに恒吉良真、両ワイドは右に千賀翔大郎、左に中原蒼空、シャドーが神田龍と大見咲新で、最前線に西森脩が入った。変則的なのは恒吉の位置取りで、明確なボランチというよりは左のシャドーに役割は近く、神田が中原とともに左の崩しを担当する中で、恒吉は中盤からボールを運んでチャンスメイクを担当。神谷がその後ろで守りのマネジメントをするような形になったが、かと言って神谷が上がってこないということもなく、多くの得点に神谷は絡んでいるから攻撃的な戦いぶりではあった。ちなみに西森脩と中原、苅米はオーバーエイジ枠での出場である。

キャプテンマークを巻き、1トップの位置からチームを引っ張った西森脩斗。

試合は立ち上がりこそエストレラ姫路に押しこまれたが、「自分のところで時間が作れるんだったらそれで解決していた」と西森脩が言う通り、やや強引にでも前線に起点ができ始めると形勢は逆転。8分に左の突破から中原の折り返しを大見がねじ込んで先制すると、11分に西森脩が個人技で仕留め、15分には神田が抜け出して追加点。8分間で3得点を奪う電光石火の攻撃で完全に試合を掌握すると、その後も押し気味に展開を進めて40分、45+2分にそれぞれ西森脩と神田が加点。彼らの得点技術もさることながら、前半特に目立ったのは恒吉の推進力だった。後方からボールを引き取ると目の前の敵をひとり、ふたりとはがして空いている味方にパスをつける圧巻のチャンスメイク。「自分も中盤で受けてかわしていくっていうのが特徴でもある」と自信に満ちた表情で語る1年生は、今夏に大きく実力を伸ばしたひとりでもある。中原と神田による左の崩しも破壊力があり、シャドーではなくウイングバックとなり、本来のポジションに近づいたこともあってか中原の突破力が復活していたのも嬉しい収穫のひとつだった。

ボランチとシャドーの中間のような位置取りでプレーした恒吉良真は力強く運んでスルーパス、というプレーで何度も好機を演出。11分の追加点の場面も、同じように味方にチャンスを提供した。

展開を引き戻すには神田龍の推進力も一役買った。やはりこのレベルだと図抜けたものがある。

5点差をつけて迎えた後半はまたも立ち上がりで押しこまれたが、開始9分の神田のゴールで反撃の糸口をつかむと、続いて西森脩も実に彼らしいターンシュートで3得点目。プレミアリーグの主力である西森脩と神田と相手との実力差は圧倒的で、後半は神田の独力突破、ボールの持ち運びが別格の輝きを放っていた。彼のひとりでチームを押し上げていける運ぶドリブル、突破のダイナミックさは今年の中でもさらに伸びた感があり、今季はさらに貴重な得点でもチームを助けてきたが、この試合でもそういった彼の持ち味は存分に発揮され、そして実際に試合の流れを大きく変える要素ともなった。前日のプレミアでも1得点を挙げていた西森脩も2日間で4得点と最高の週末に。「これをプレミアの相手でもやれるようになれば、自ずと得点は増えてくる」と感覚を研ぎ澄ませることができたことは、彼にとって何よりのポジティブなことだったに違いない。

インナーラップのようにボールを持ち運び、攻撃をクリエイトしていった水野優人。広島の中野就斗みたいだった。

7-0となった試合は選手交代を挟んで終盤戦へ。相手の疲れもあってか名古屋の支配力が強まる中、個々の能力が際立つ試合にもなっていった。とりわけ素晴らしかったのが3バック右の水野で、前半は効果的なダイアゴナルパスで攻撃を下支えする姿が目立っていたが、後半は自らが攻め上がっていく迫力が増し、ゴール前でプレーすることもしばしば。対人守備も激しく、身体能力も高いのでおそらくはウイングバックもカバーできる強度があったのが印象的だった。強度で言えばフル出場の大見もシャドーながら守りへの切り替えが速く、長身でいて器用なプレーぶりもこのポジションには合っている。何よりこの日の先制点を挙げたように、淡々としているようで得点に絡む力があるのが彼の特徴に思う。他にも3バック起用で自慢の左足の活用法に幅が出てきた感のある白男川羚斗など、新たな一面を見せる者もいた。

大見咲新は長身だが器用で得点に絡む。中盤低めもこなせるポリバレント性もあり、面白い存在。

最終結果は終了間際に石田翔琉と平川大翔が決めて9-0でフィニッシュ。33本ものシュートを放っただけのスコアに仕留め、中島がセーブをすることがおそらくなかった守備陣の安定感もプラス材料と言える。Jユースカップは次週はアウェイ奈良での試合が予定されているが、こうして個々が自信をつける場となるならば、うまく活用して残るプレミアリーグ、プリンスリーグへの戦力の上積みを図っていきたいところ。大勝がもたらした爽快感や充実感は、正念場を迎えるU-18全体にも必ずや強い追い風を吹かせていくはずだ。

reported by 今井雄一朗

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