赤鯱新報

【U-18レポート】小さくて明確な差。明らかな違い。首位独走の相手の強さに屈した厳しい敗戦に、それでもチームは前を見る。

■高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第14節
2024年9月15日 17:00 KickOff トヨタスポーツセンター第2グラウンド(天然芝)
名古屋グランパスU-18 0-3 大津高校
得点者:33’ 溝口 晃史(大津)58’ 山下 景司(大津)71’ 嶋本 悠大(大津)

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プレミアリーグWEST後期の大一番、首位・大津との一戦が15日にトヨタスポーツセンター第2グラウンドで行われた。いつも通りロッカーアウトしてくる選手たちを送り出すべくメンバー外の選手たちが並んでいたが、そこには負傷欠場の青木正宗の姿も

逆転優勝への大一番と誰もが思う戦いに、若鯱たちは彼我の差を見せつけられるような想いがしていたに違いない。自分たちの強みはほとんど出せず、大津の良さはいかんなく発揮された。ビハインドを背負いながらも十分に戦えていた前半のうちに追いつけていれば、傷口は浅いどころか相手に深手を負わせることもできていただろうが、強度の高い支配力を90分間変えることなく表現してきた首位はその立ち位置の必然性を誇示。後半は特にやり込められた感も強く、0-3以上のインパクトがこの敗戦にはあった。2日連続で見る完敗はなかなかに厳しいものがあったが、育成の側面からすればこれもまたいい経験にはなり、悔しさは次戦のチームを後押しする強力な追い風にも変わる。

凛々しい表情の神田龍を先頭にピッチへ向かう選手たち。

青木正宗と松嶋好誠を負傷で、大西利都をU-17日本代表活動で欠く名古屋ユースは“飛車角落ち”とも言える状態ではあったが、この日のスタメンを見れば痛手ではあっても十分に闘えるメンバーであったこともまた確か。1トップに杉浦駿吾を配し、西森悠斗と神田龍の2シャドー、3バックにしても神戸間那が戻って森壮一朗、鶴田周と組めば青木がいる場合と遜色はない。松嶋不在のボランチにしても八色真人がいるのだから大きな問題はなく、控えにも恒吉良真が戻って切り札的なアタッカーは用意できている。あとは大津を相手に何を狙い、どこに要点を置くかというのが勝敗に関わる部分だったわけだが、惜しむらくはその点で後れを取ってしまったのが敗因のひとつには数えられた。

青木正宗欠場により、キャプテンマークは杉浦駿吾が巻いた。青木のように整列のあとに仲間たちとのハイタッチをする。

立ち上がりから攻守にパワフルなプレーを連続した大津は一気にペースをつかみ、ハイプレスで名古屋から遅攻とポゼッションを奪い去った。前半はそれでもDFラインからのロングフィードが杉浦や神田龍のチャンスを生み、相手のミスにも乗じて決定機も数度。だが大津のGK村上葵がこの日は絶好調で、神がかったセーブを連発して名古屋攻撃陣をシャットアウト。じわじわと大津が展開を挽回し始めると、杉浦の決定機の直後にシンプルなクロスからのヘディングシュートを仕留められ、試合巧者っぷりの前にビハインドを背負った。神田のシンプルな仕掛けを支持する左サイドと、伊澤翔登や西森悠、神戸に野村勇仁らまでもが絡んでくる重厚な右サイドというように、前半は仕掛ける手立ても十分にあったが、返す返すもこの左右非対称な攻撃に質が伴っていればというのがまさしく後悔で、0-1で迎えた後半に選手たちはモチベーションも高く臨めてはいた。

前半33分の失点でリードを奪われつつも、ポジティブなハーフタイムを過ごした名古屋U-18。17:00キックオフの後半はすっかり日も落ちてのナイトゲームの環境になっていた。

まずは同点にずるところからが後半のミッションだったが、「入りは前節と同じで悪くて」と森壮一朗は振り返る。それでも前節は猛攻に耐え抜いての追加点という理想のひとつを実現し、チームが大いに手応えをつかんだ試合で、一方で大津はハーフタイム明けからさらにギアを上げ、名古屋を仕留めにかかってきた。攻守ともにボールへの寄せが早く、とりわけセカンドボールへの反応は桁違いに速かった。ビルドアップに狙いを定めたプレスも強烈で、長いボールを蹴っても名古屋は前半ほどの効果は得られずじまい。「後半は自分たちが受け身になって、ピンチも多く作られたという感じで完敗した」とは森の感想だが、大津がいまこの位置で独走している理由を見るのもうなづけた。

劣勢の中ではロングフィードが合わなくても、「それでいい」と合図を送りながら走る杉浦駿吾の姿があった。

後半は58分に森のパスミスから招いたピンチを仕留められ、万事休す。交代策も含めた懸命な追い上げも大きな変化は起こせず、71分には味方のディレクションという不運にまで見舞われ0-3の大敗を喫した。追い上げなければいけない後半45分のシュート数は2。押し込まれて跳ね返すもセカンドボールを拾われ、相手の二次・三次攻撃が始まるというのは控えめに言って厳しい展開で、ビルドアップのつなぐパスにまで相手のプレッシャーが機能し出せば、大津は“攻撃は最大の防御”を地で行く見事な即時奪回の大家といえた。三木隆司監督は3枚替えなどいろいろ手は打ったが、最終的にシュートまで至らない攻撃の繰り返しには選手の焦燥感も募った。

悔しい敗戦に、観客へとあいさつに行く選手たちの表情もすぐれない。

6ポインターと呼ばれる上位直接対決に敗れ、大津との勝点差は11に広がった。数字上では優勝は遠のいたが、しかし諦めるにはまだ早い。杉浦や神田、西森悠斗も脩斗もオール2年生による3バックも、個性豊かに実力は見せていた。足りないのは決定力と、三木監督の言う「相手を見れてなかった。相手の変化を起こせてなかった」という試合運びの面。一つ決まっていれば流れは間違いなく変わっていたはずで、それは主力欠場に関係なく実現できた部分だった。頼もしいのは悔しいの極みにあるこの敗戦と今後のリーグ戦について、森が「まだ可能性がゼロかと言ったらゼロじゃない。少しの可能性でも残していれば、そこに向けてやるしかない」と言えば、八色真人は「とりあえず全部勝てばまだ可能性ある。全部勝ってれば大津は焦るかもしれない」と腹が据わった様子だった。厳しい戦いだったが、このチームは目の前の試合に勝つことと同じかそれ以上に、育成の観点にも軸足を置く。強くなって結果を出し、結果からまた次の成長のヒントを受け取る。今季のWESTの最強チームのひとつはそれだけの力を見せ、名古屋U-18は今回は太刀打ちできなかった。重要なのはいつでも“次”だ。次戦でもうワンランク上の強さを見せることができれば、それは自ずと試合の勝利と目標の達成の両方につながっていく。

reported by 今井雄一朗

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