赤鯱新報

【U-18ミニインタビュー】西森悠斗 「シーズン10得点の目標は変えない。その上でチームを支える、“引き出す”になる」

西森悠斗

再開したプレミアリーグWESTで熾烈な上位争いを演じる名古屋U-18はその初戦を見事な勝利で飾り、今週末は首位の大津高校との大一番に臨む。現在の勝点差は8で、勝てばその差を5に縮め、負ければ11とさらに状況は厳しくなる“6ポイントマッチ”に向け、今回は負傷からの復帰を果たし、パフォーマンスを上げ続ける西森悠斗に話を聞いた。序盤戦は中足骨の骨折で棒に振り、クラブユース選手権前からようやく戦列に戻ってきた主力の一角は、穏やかな性格そのままにチームを見守り、支え、そして密かな野心もたぎらせながら目の前の一戦に挑んでいる。個性派揃いの名古屋ユースには、彼のようなリンクマンの存在がここからさらに重要性を増してくるに違いない。

Q:復帰してから時間も経ちましたし、コンディションもだいぶ上がってきたと思います。

「3ヵ月の離脱をして、復帰して、プレミア前期の最後の方には途中から何試合か出て。そこからクラブユースに行って、クラブユースでチームが勝ってベスト4まで行ってくれたことで、全国の舞台でより長くプレーすることもできました。そのあとの夏休みの時間で自分のコンディションもかなり戻せたので、このプレミア後期が始まるまで、前期の最後やクラブユースのうちにプレー時間を少しでも長くできたというのは大きかったかなって思います」

Q:復帰する中で自分の感覚やパフォーマンスを戻す、その作業で一番苦労したところや、戻ってほしかった部分はどんなところでしたか。

「自分はこのケガをするまでは“3ヵ月間サッカーをしない”ということがなかったので、どういう感じになるのかわからなかったんですけど、思ったより体力は早く戻ったかなって感じだったんです。でも筋力の部分で、たとえばシュートのパワーが出なかったりとか、当たり負けするというのは、復帰してすぐの時は何回か見られる場面はあったんで。 そういう部分が一番苦労したかなって思います」

Q:何か意識的にやったトレーニングもありましたか。

「特にそこですごく意識したってことはないですけど、普段のウエイトの時間だったりで、逆にケガする前とあまり変えずに、ケガする前の時と同じように練習に取り組んだぐらいかなって感じです」

Q:復帰してからのパフォーマンスの中で、今のところで言えばパスがすごく目立っているように思えています。

「(ECLOGA2024の)昌平戦でのアシストだったり、良いパスが何回か出せて、そこから自分の中でもパスの調子がけっこう良いなっていうのはあって。それは(大西)利都だったり、(西森)脩斗だったり、(神田)龍だったり、(杉浦)駿吾だったり、一緒に前線を組む選手たちの動き出しも、自分のパスの精度を引き出してくれているのかなとは思います」

Q:自分の持っているものの中で、パスというのはもともと自信がある武器だったのか、それとも今はすごく調子がいい部分ということなのか、そのあたりはどうなのでしょう?

「小学校だったり中学校の時は、ボランチもけっこうやっていたんで、自分の中でパスというのはけっこう自信を持っていたんですけど。ユースになってやっぱり相手のディフェンスの能力も上がってくる中で、1~2年生の時は出せた部分もあったんですけど、すごく特徴として出せたかって言われたらそこまで出せてはなかったかなって感じだったんです。でも3年になって、前の選手だったりと関係性を持つ機会も多くなったので、そういう部分が出せてきてるのかなとは思います」

Q:1~2年生の頃はポジションもサイドやトップでしたから、受ける側だったこともあるかもしれませんね。そこは総合的に考えて、受け手だった頃の経験ともともとの出し手の部分がうまくミックスできているような感覚でもありますか。

「そうですね。去年はサイドハーフだったり、FWもやったんで、受け手というところで意識する部分もけっこうあったので。今ももちろん受け手の部分でも意識はしますけど、受け手の気持ちがわかったからこそ、出し手としてもやりやすくなったかなっていうのはありますね」

Q:今季取り組んでいる3-4-3の布陣の中では、シャドーの自分は点を取るポジションであり、味方を活かすポジションでもありますね。半年やってきた中での自分の役割はどれぐらい固まってきましたか。

「駿吾や利都はダイナミックなプレーが多くて、すごくゴールを取ってくれて、すごくチーム助けてくれています。自分も前線をやるからにはそうやってたくさんの得点に絡んでチームを勝たせたいっていうのはありますけど、逆にそのふたりだったり、それ以外の選手も、他の選手の特徴を引き出すというのが自分の特徴のひとつでもあると思うので。関わりだったり、味方の特徴だったりをしっかり把握しながらプレーして、自分もゴール決めたいっていう気持ちは強く持ってますけど、それだけじゃなくてチームとして勝つために。そういう人の特徴を引き出すような選手も絶対に必要だと思うので、周りの選手とうまくコミュニケーション取ってやるというのが、今の立ち位置かなとは思ってます」

Q:プレミア再開初戦は良い勝ち方ができましたが、まだまだ修正点はあると思います。

「前期はケガしていて試合を見ていることが多かったんですけど、そこから、チームがやろうとしているサッカーを変えようとは別にしていなくて。この間の試合でも前半と後半に2点ずつ取って、その得点の流れだったりはほんと良かったなと思うんですけど、後半立ち上がりの苦しい時間もあった中では、常に良い時間が続くことは絶対にないとも思っています。その苦しい時間を後半でどれだけ耐えて、良い時間で得点を決めるかというのがほんとに大事だと思っているんで、まずは良い時間を長くできるように、そして耐える時間をみんなでしのげるようにやっていきたいと思います」

Q:その耐える部分を含めて試合をどう進めていくかという部分は、特に中断前の試合ですごく課題として出ていたところでした。そこにいま答えが出始めているのはすごくポジティブですね。

「チーム全員で前から守備するっていうのはありますけど、ディフェンス陣のゴール前での粘り強い強さを、前線の選手、自分は特にですけどすごく感じています。前回の鹿児島城西戦でも後半立ち上がりはクロスが多くて、それでも何回でも跳ね返し続けてくれたので、守備陣の粘り強さっていうのはすごく上がっているなと思います」

Q:大津戦は大一番です。自分たちが優勝するためには首位との直接対決は絶対に落とせない、というところでの意気込みはいかがでしょうか。

「勝ち点が今は8差で負ければ11に広がって、そうなっても諦めるわけではないですけど、勝ち点11差をひっくり返すっていうのはかなり難しくなると思います。だから絶対に勝たなきゃいけないですし、でも個人的にはここで勝てれば優勝できるのかなとも思っていて。ここで大津に勝てれば絶対自信にもなると思うし、それが残りの試合にもつながってくる。大津は逆に、負ければこの後の試合も負ける可能性があるので、ほんとにこの試合が優勝するかしないかってとこにつながるかなって思っています」

Q:高体連のチームは夏を超えるとワンランク強くなることがしばしばありますが、それはどう感じていますか。

「高体連には夏のインターハイがあるので成長するっていうのは毎年そうですし、よく聞くことでもあるんですけど、自分たちもクラブースでベスト4まで戦ってきていますし、練習量は高体連チームの方が多いかもしれないですけど、練習の質の濃さっていうのは自分たちの方が絶対上回ってると思うので。そういうところでは自分たちをネガティブに思いすぎずに、立ち向かっていけたらなって思います」

Q:またそのクラブユースは良い大会にできた中で、自分たちが掴んだもの、プラスにできたものは西森選手はどう感じていますか。

「連戦の中ではなかなかコンディションが上がらない選手だったり、思うように試合に出られない選手だったりがいて、不安や苦しさを感じている選手もけっこういたんです。でもその中で宿舎だったり休息日だったりで、チームで話し合う時間も普通の練習日よりは多かったので、そこで支え合うという状況も多くなって。チームのために、全員が勝利のために戦うっていうところで、クラブユースではひとつレベルアップできたのかなって思います」

Q:チームの話し合いの中で、西森選手はどういう発言したり、どういう立ち位置をとっていたのですか?

「いや、話し合いっていうほどでもなく、部屋とかで話すぐらいでしたけど…(笑)。自分はクラブユースはケガ明けなので、どっちかと言ったら思ってたよりは動けた方だったんで、そこまでネガティブに思ってなかったんですけど。やっぱり前期を戦ってきた選手にはなかなかコンディションが上がらなかったりという選手もいたんで、彼らを楽にさせてあげることだったりは考えました。彼らが思っている以上に、彼らができてないわけではないと思ったので。あとは連戦だったんで、そこで気持ち落としていたら絶対上には行けないとは思ってたんで、『気にしすぎるなよ』みたいな話はしてました」

Q:リーダーシップを取るのは3年生には求められるところですが、自分の表現の仕方としては現状どう考えていますか。

「自分はなかなかそういう、前に出て発言するっていうタイプではないんですけど。今年は駿吾とふたりで副キャプテンをやらせてもらっていて、前回の試合では(青木)正宗が試合中に負傷退場したりもして。その時も駿吾と一緒にというか、自分がリーダーシップ持ってやらないと、絶対にチームの力は下がると思ってやっていました。他にもこういう日々の練習でもその間の時間だったりでも声をかけたりして、チームの練習環境を週末に向けてあげていかないといけないなとは思ってます」

Q:繰り返しになりますが、今チームはすごくいい感じになっていると思います。このチームのポテンシャルや可能性はどういう風に感じていますか。

「チームの1年、2年、3年の全員を含めたチームの環境というのはすごく良いものがあると思います。多くの選手が試合に絡んでいて、今の総合力っていうのはほんとに大きいと思うので、いくつか勝てばそれが自信につながって、何連勝でもしていけるなっていうのは感じています。今、前回の鹿児島城西戦を勝てて、この次の試合だったり、その次の試合を勝利することがほんとに大事だと思います」

Q:今年の頭、二種登録された時に話を聞いた時には、シーズン10点という目標を掲げていました。改めて、自分の残りのシーズンで表現したいこと、目標は今どんなことになっていますか。

「前期であまり試合に出られなくて、今はまだ1点しか取れてない状況ですけど、その目標というのは変えようとはまだ思ってなくて。残りの試合数を見ればその目標は全然達成できると思う。練習でも自分のコンディションはかなり上がってきているので、得点っていうことにこだわりすぎるのも良くないですけど、決めた目標を達成できるようにやりたいなと思います」

Q:その意味でもまずは大津戦の勝利ですね。どんな試合にしたいですか。

「大津はいま連勝をずっとしてきていて、絶対に自信を持ってきているとは思うんです。苦しい時間もあると思うんですけど、前期では大津に負けていても、プレミアで前期負けている広島をクラブユースでは跳ね返してるんで、大津も全然、跳ね返せると思います。チャレンジャー精神持って、一つひとつの局面で負けないこと、全員で助け合うってところをやれば、大津には勝てるかなとは思います」

reported by 今井雄一朗

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