【U-18レポート】圧倒、忍耐、また圧倒。夏の蓄積を結果に表した名古屋U-18が、再開初戦で快勝を収める。
■高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第13節
2024年9月7日 17:00 KickOff トヨタスポーツセンター第2グラウンド(天然芝)
名古屋グランパスU-18 4-1 鹿児島城西高校
得点者:31’ 杉浦駿吾(名古屋)45+3’ 大西 利都(名古屋)83’ 杉浦 駿吾(名古屋)87’ 神田 龍(名古屋)90+5’ 添島 連太郎(鹿児島城西)
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夏を境に見違えるように成長するとは、高体連のチームによくある話だが、今季の名古屋U-18にも同じことが言える。タイトルこそ逃したが、クラブユース選手権での好試合の数々が彼らを大きく成長させ、しっかりとした休息とリフレッシュも挟んだチームは図太い芯を手に入れたかのようだった。好感触の前半から、後半立ち上がりの苦戦は今までにもよくあった展開で、しかし今回はそこで耐えきってもう一段階ギアを上げてダメを押した。終了間際の失点が何とも言えない課題に見えて仕方がないが、4-1の勝利は快勝である。その結果と内容に満足した様子を見せない選手たちには頼もしさしかなく、逆転優勝を狙うプレミアリーグWESTの残る戦いに、希望の光が差すようでもあった。
再開初戦のメンバーは、病欠上がりの神戸間那を除いては現状のベストメンバーのひとつが構成された感があった。GKに萩裕陽、3バックは森壮一朗を右に、中央が青木正宗、左はすっかり定着した感もある鶴田周でフィックス。ボランチに松嶋好誠と野村勇仁のコンビが選ばれたのは、松嶋と八色真人よりも守備強度の面で優ることが考えられ、今後はむしろ野村を軸に相方が選ばれるのではという印象もある。野村は前方へのパスにも長所を見せ始めており、強度については意識も高い八色も交え、3人で2枚のポジション争いは激化の期待も膨らんできた。
ウイングバックは右に伊澤翔登、左に池間叶で、このセクションも野中祐吾という切り札でありスタメン候補がいることで良い緊張感がある。シャドーにはこの夏でコンディションを取り戻した西森悠斗が入り、杉浦駿吾と大西利都の強力なスコアラーが順当にスタメンに名を連ねた。ここにもクラブユース選手権で大活躍だった神田龍や、西森脩斗に中原蒼空など面白い人材がひしめいており、何とも充実の布陣が形成されている。この11人がまずは高いインテンシティを保って闘っているのだから、対戦相手はそう簡単には主導権を奪えない。
とはいえすべてが上手くいくこともなく、試合は押し気味の展開ながら決定機がそれほど多くはない立ち上がりとなった。大西の背後への動きと力強い突破、その下で起点を作ってチームを牽引する杉浦と西森悠というバランスは良く、相手のスカウティングも十分に3バックがピッチを広く使うフィードでメリハリをつけた。寄せて展開、クロスも交えて多重に敵陣を攻略する中では、21分にキャプテン青木が負傷交代するアクシデントもあったが、野中を入れて鶴田が3バック中央、池間が3バック左にスライドするスクランブルも安定し、30分には相手バックパスの隙を突いて大西がPKを獲得。これを杉浦が決めて先制すると、流れは一気に名古屋ユースのものとなった。それでも「5~6点は取れたシーンがあった」(杉浦)と追加点がすぐには生まれなかったが、アディショナルタイムに杉浦のパスに抜け出した大西が流し込み、2-0での折り返しに成功。良い形で試合を折り返した。
後半は当然のように鹿児島城西が前に圧力をかけ始め、コントロールしようとした名古屋U-18は苦戦。前半のような大きな展開が減ったことで相手のインターセプトや即時奪回の数も増え、自陣に押し込まれる危ない時間が続いた。パスがつながらず、クリアも短く、何とかDF陣がしのぐ展開には観ていてヒヤヒヤするところも多かったが、「この夏に磨き上げてきたゴール前の粘り強い守備っていうのは出た」と森が語ったように、この時間をしのぎきったのはチームの成長だ。ベンチもそこに処方箋をと西森脩と神田を入れ、2列目のキープ力と推進力を強化。最初はなかなか効果もてきめんということはなかったが、相手も攻め疲れたところで交代策がはまり出す。
83分、自陣からボールを引き取った西森脩が力強く持ち出すと、スルーパスを受けた神田がダイレクトシュートで相手ゴールを急襲。ここはGKに阻まれたが、「そのまま決めると思ったけど、2対1を作る方が確実」と油断なく詰めていた杉浦がきっちり流し込んだ。耐える展開を耐えきったからこそ生まれたチャンスに、応えたエースの集中力は見事の一言。87分にはこちらも途中出場の八色真人のパスに抜け出した神田が、今度は自分で勝負に持ち込みループシュートでGKの頭上を抜いた。この選手の推進力と決定力もまた夏の収穫のひとつで、交代カードで勝負にダメを押した流れもチーム力の上昇を感じたところ。アディショナルタイ5分に押し切られるようにして1点を返されたのは残念だったが、これもまた良薬として次戦の大一番へとつなげてほしいもの。
次週は首位の大津高をホームで迎え撃つ6ポイントゲームで、U-17日本代表で大西を欠くのは痛手だが、前述のように西森脩、神田らの好調が穴埋めという言葉を許さない。青木の状態も心配だが、神戸がコンディションを戻せばまた違った良さもDFラインには生まれ、「前半の途中で(青木)正宗が抜けて、キャプテンがいない中で誰がリーダーシップを取っていくかっていうのも、しっかり自分がっていう風になれれば」と語った森の意気込みが期待を加速もさせる。勝って反省の良いサイクルからリーグを再開できたことも好材料で、次はどれだけ引き締めて首位と対峙してくれるかは楽しみでしかない。大津もまた夏を超えて成長しているだろうが、名古屋ユースもまた進化を遂げている。反省含みの快勝劇は、彼らの成長をまた促したはずだ。
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