【赤鯱短信】磨けば光るキャラクターの宝庫。名古屋アカデミーよもやま話。
この書き出しは何度目かになるか。今回は短めの、本当の“短信”である。テーマはアカデミー四方山話。このところ集中的にアカデミーの取材をしてきた中で、あれやこれやの雑談をまとめてみようと思う。
まずは1年生の千賀翔太郎だ。この苗字で「おや?」と思った方もいるかもしれない。結論から言うとその期待は裏切ることにはなるのだが。蒲郡市出身の“千賀”と言えば、やはり野球の千賀滉大で、千賀翔も実は蒲郡の出身。以前から「もしかして親戚?」と思っていた方もいるかもしれないが、この度本人に聞いたところ、「全然関係ないです!」と爽やかに否定された。「ほんとよく聞かれるんですよねえ」と笑顔の千賀によれば、この苗字は蒲郡には多いらしく、「学校にも数人いますよ」とのことだった。アスリート二世と言えば名古屋にも大西利都がいるが、さすがにそこまで奇跡的な巡り合わせもなかったということ。ちなみに先日行われた「U-18夏の交流戦 ECLOGA2024 in 豊田」には鹿児島城西も招待されていたが、選手の中に「長渕」がいたとのことで、ちょっとザワついたらしい。もちろんこちらも、関係なかったようである。
次は2年生の伊藤ケンだ。「U-18夏の交流戦 ECLOGA2024 in 豊田」では1日目のB戦でとことん決定機を外して「ああーもう!」と何度も試合中にうなだれていた、何とも憎めないキャラクター。話してみるととにかくノリが軽く、これぞ“陽キャ”といった元気印だが、髪型を見ると坊主頭の側頭部にうっすら見える前後のラインが確認できる。とても似合っているのだが、これにもちょっとした裏話があるようで。「ほんとは坊主じゃなかったんですよ」と伊藤は言う。「最初は壮一朗に片方にラインを入れられたんですけど、次の日また逆サイドにも入れられて。これじゃさすがに学校もまずそうだということで、坊主にしました」。陽気に笑って伊藤は付け加えた。「だからおれ、1週間で3回髪型変わりました」。お調子者の森壮一朗はどうやら直近では白男川羚斗の坊主頭にもかかわっているらしく、これからも何を仕掛けてくるかわからないなと思った次第。
そういえばその森にもエピソードがある。前々から気になっていたのだが、彼はJFAアカデミー福島出身の選手で2007年生まれ。JFAアカデミー福島といえば谷川萌々子も出身で、彼女は2007年生まれだ。この二人、もしかして交流があったりするのでは、と思っていたが、先日のSDGsアカデミーの際にちょっとだけ聞くことができた。「僕が中1の時に谷川さんは中3で、でも直接の交流はなかったです」と森。やっぱりそんな都合のいい偶然ないよなあ、と思った次の瞬間である。「ただ、女子の中3と男子の中1は練習試合をするんですよ。そこでマッチアップはしました」。交流はないけど試合はしていた、しかもマッチアップもしていた! 10年ほど前の基準にはなるが、なでしこジャパンは合宿の際のトレーニングマッチの相手に「男子の公立強豪校」を選ぶと聞いたことがある。それぐらいがレベルやフィジカル的にちょうどいいのだと。女子中3vs男子中1もそういった基準のことなのかもしれないが、さて気になるマッチアップはというと、「めっちゃフィジカル強かったです。僕の方がその時点でも身長はあったんですけどね…」。高校1年時からプレミアリーグWESTでプレーするほどの身体能力を持つ森が、「めっちゃ強かったです」とは、やはり谷川は次元が違うということか…。
今週末、プレミアリーグは再開し、岡山U-18とのアウェイゲームに名古屋U-18は挑む。ASローマに練習参加中の大西利都と恒吉良真は帰国が間に合わないようだが、昌平や尚志との闘いの中で彼らはまた自分たちの戦い方に深さや幅を得たように見えた。ここにトップチームや代表で視座を上げている杉浦駿吾、池間叶らが加わり、よりベーシックの部分を押し上げて準備を進めていけるのであれば、後期の戦いには期待感が持てるというもの。余談だが、昌平の玉田圭司監督と「次はどこでお会いすることになりますかね」と話していたら、「そっちが来ないともうないんじゃない?」と言われた。だから「プレミアファイナルとか?」と言うと、何も言わずに口角だけが上がった、ように見えた。あまり都合のいい解釈ばかりしていても良くないが、ファイナルの舞台は埼玉スタジアムで、もちろん昌平は埼玉の高校である。「そっちが来ないと」は言葉そのものの意味でも、心は拡大解釈をしてしまうではないか。
今回話題に挙げた3人のみならず、U-18にはそれぞれに特徴的な選手がまだまだいる。まだちゃんと話せていない選手もたくさんいるので、今後も折を見て彼らの内面に触れていければと思う。