【U-18レポート】トライ&エラーの結果は追いつけずに0-1の敗戦。しかし得たものは大きかった真夏の2日間が幕を閉じた。
1試合目の環境は前日にも増して暑く、2試合目は前日よりも過ごしやすかっただろうか。トヨタスポーツセンターの第2グラウンドは陽が落ちれば涼しいくらいで、いやもしかしたら1試合目が暑すぎるだけなのかもしれないが、しかし1試合目のB戦も、2試合目のA戦も、それぞれに熱量の高い試合を見ることができた。「プレミアリーグ後期開幕前の強化、交流」が目的の「ECLOGA 2024 IN 豊田」は23日に2日目の試合が行われ、名古屋U-18は福島の強豪・尚志との一戦に臨んだ。偶然にも前日戦った昌平と同じくしっかりボールを持つチームとの対戦に名古屋の特徴は活かされる試合となり、しかしそこできっちり決定力を発揮できたかどうかでAとBの試合の明暗は分かれた。やはりどこまで行ってもサッカーとは、得点を奪ってゴールを守るスポーツなのだと、高校生たちは理解したはずだ。

今日のBチームのスタメンはこの11人。昨日の後半のメンバーが主体となり、数名はA戦の方に回っていた。
西日がまだ強い時間帯に行われたBチームの戦いは、スタメンを前日から半数入れ替え臨み、かつ伊藤ケンや千賀翔太郎、神谷輝一らがAチームメンバーに“異動”。残るメンバーを入れ替えながら80分間を戦うことになったが、昌平戦よりもアグレッシブに、馬力ある戦いを彼らはやってのけた。GKは中島眞一郎、3バックは右から成瀬楓悟、小室秀太、丸山世来人が並び、ボランチは大澤菱と小島蒼斗のコンビ、ウイングバックは右に水野優人、左に白男川羚斗が入った。前線は頂点に石田翔琉、シャドーに大見咲新と中篠遼人のふたりで、序盤から試合は打ち合う展開に。

9分にコーナーキックから失点した名古屋U-18Bだったが、10分にすぐさま反撃。白男川羚斗、中篠遼人とつながったボールを受けた大見咲新が右足を振り抜くと、相手GKも「えぐい」とうめくスーパーゴールが突きささった。
8分の尚志のチャンスを中島がビッグセーブでしのいだと思ったそのコーナーキックで先制され、しかし1分後に大見のスーパーゴールで同点に追いつく。白男川が差し込んだパスを中篠が粘って落とし、バイタルエリアで受け取った大見の強烈なミドルシュートには、決まってすぐに相手GKが「えぐい」と唸った一撃。その後も石田、中篠、白男川らが起点となって攻勢に出た名古屋U-18Bだったが、彼らでシュートまで行けてしまうからこそ距離感が伸びて攻撃が発展せず、尚志の回復時間を与えてしまったのはマネジメントの部分の課題が出た格好か。それでも前半36分のコーナーキックを白男川が頭で打ち込んで逆転したことで、陽も落ちて動きやすくなる後半に戦いやすさが出たのは幸いだった。

勢いのままに開始4分、白男川羚斗の突破から石田翔琉が決めて追加点。
後半は相手ビルドアップへのプレッシングをより強調し、相手陣内での攻守の回転を名古屋U-18Bは目指した。回収のサイクルができればこのチームのアタッキングスタッフは多彩で、中でも中篠と白男川のいる左サイドは一点突破も連係による崩しも両方が存在して頼もしかった。白男川は以前に比べてクロスに執着するところが良い意味で減り、ドリブルの迫力と中篠や石田らとの連係してのボックス攻略にも加わるようになった。中篠や石田は狭いところでも簡単に前を向いて仕掛けられるため、パスを預けて次の動き出しをする選手が多いのもこのチームの特徴だ。大見や水野、小島がその仕掛けの外堀を埋めるようにサポートに入り、さらに変化が欲しければ丸山やオディケチソン太地、苅米飛和など3バックの面々まで攻撃に加わった。結果としては開始4分の石田のゴールで3得点目を挙げ、後半26分に1点を返されたものの、DF陣はおおむね安定していた上にGKの中島も好セーブを連発した。攻撃陣もあと数点は取っていておかしくない決定機を演出しており、3-2の勝利にはこのチームのポテンシャルを感じるようだった。

そしてA戦がスタート。昨日のメンバーと一部を入れ替えたこの11人は、活躍が評価されたところもあってなかなかに意欲的だった。
文字通りの“弟分”がB戦を制し、始まったA戦は野村勇仁の言葉を借りれば「良いところと、悪いところがチームとしてはっきり出た」。尚志のポゼッションに対してかなり高い位置でのプレッシング、ゾーンでの圧力をかけていった名古屋U-18だったが、シュートの数がなかなか増えていかないとはトップチームにもありがちな展開だ。メンバーはGKに萩裕陽が戻り、3バックは神戸間那、青木正宗、鶴田周の3人。ボランチは八色真人と野村で、ウイングバックは右に伊澤翔登、左には“昇格組”の千賀翔太郎が選ばれた。シャドーは西森悠斗と前日の昌平戦で流れを変えた中原蒼空が選ばれ、1トップにはハードワーカー西森脩斗。この11人で目論んだのはピッチを広く使ったダイナミックな戦いで、少なくともそれは前半の半分まではよく機能していたと思う。

1トップに入った西森脩斗がシュートを狙う。
彼らはまず西森脩のフィジカルの強さを活かして背後への動きを強調し、DFラインを押し下げてシャドーのプレーする余地を作ることから始めた。そこがクサビになればボランチが楽に視野を取れるようになり、八色の左右の散らしと野村の縦パスがバランス良く前線の選手たちへと供給ざれる。攻撃が回れば守りもリズムができ、時折あるピンチも萩がしっかりかき出した。上下左右、縦幅と横幅を大きく使う攻撃は後方の援護も促し、鶴田のダイアゴナルランによるチャンスメイクも数度、前半だけで見られた。惜しむらくはそこで先制できなかったことで、慣れてきた尚志が飲水タイムを挟んで状況を整理し、さらに飛ばしていた名古屋が体力的に落ちたことで形勢は逆転。保持からサイドの奥を使う大きな展開に名古屋が翻弄され始めると、29分にはシンプルなフィードに飛び出した萩がかわされ、追いすがったDFのシュートブロックもむなしく先制点を奪われた。

インテンシティの高いプレーへのトライだけでなく、ゲームメイクへのかかわり方にも意識を高めていた八色真人。左右に振り分けるフィードの軽快も好印象だった。
後半には神田龍や野中祐吾、山本陽暉など攻撃に特長のある面々を入れて追いすがったが、決定機はつくるが決められない嫌な展開に、相応の数だけ相手にも決定機をつくられた。そこには萩が立ちふさがったが、攻撃陣がその好守に応えられなかったのは残念といえばそうだった。シャドーに入っていた中原は「最後の決めきるところで、ほんとにシンプルに自分の実力、技術不足」と落ち込んでいたが、彼はまだまだFW転向間もなく、選択肢の取り方にまだ迷いが見られる。西森脩もなかなかシュートが打てず、「点を取ること、引かれると特徴が出せないのも課題」と振り返った。彼らはどちらかと言えば連係を生む方の選手であり、過度な要求は逆にパフォーマンスを崩す。逆により結果へとフォーカスを絞った八色や前日ゴールの伊澤らがシュートの選択肢を持つようになった部分でカバーはでき、ここに不在の主力が戻れば問題解決の力にはなってくるだろう。

最後は名古屋U-18、昌平、尚志、鹿児島城西の参加4チーム全員で記念撮影。次週、彼らは東西プレミアリーグの再開初戦へ挑む。
とはいえローマ組はプレミア再開初戦には間に合わない情勢で、トップチームの練習参加が続く杉浦駿吾の起用についても不透明な部分があるため、このメンバーでしっかり点を取り、闘う準備は必要不可欠。「負けてるんだからな!」と言う声が聞かれた名古屋U-18は前からの圧力を再び強め、いくつかの決定機をつくったが最後までフィニッシュの精度を欠いた。多くのトライが散りばめられた戦いに価値も収穫もあったが、攻撃のあと一歩が及ばなかった部分には、セットプレー含めて見直しの必要性もある。だが、これだけの強豪校との対戦を通したからこその課題噴出に、残り1週間の積み上げの解像度は上がったはずだ。相手との闘い、チーム内でのポジション争い、ともに熾烈である。それを選手たちに認識させたこと、良い刺激となったことで、俄然岡山U-18との再戦が楽しみにもなってきた。今回対戦した2チームのどちらかとのプレミアファイナルが闘えれば、と考えても、これほど面白いものはない。
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