【U-18レポート】大劣勢を跳ね返し、大勝へつなげた選手たちの修正力。名古屋U-18がインハイ王者・昌平に4-1の勝利。
プレミアリーグ再開へ向けた強化と交流を目的とした「U-18夏の交流戦 ECLOGA2024 in 豊田」が昨日、そして本日の2日間にわたってトヨタスポーツセンターで開催され、昨日は名古屋U-18が埼玉の強豪・昌平高校と対戦。AチームとBチームそれぞれが40分ハーフの試合を行ない、Bが1-1、Aが4-1という結果となった。玉田圭司監督が率い、今夏のインターハイ優勝を果たした今一番の旬であるチームとの対戦はどちらも苦戦となったが、Bは土壇場で追いつき、Aは信じられないほどの大劣勢の前半から一転、後半の大量得点で快勝を収めている。
今大会には現在ASローマに練習参加に行っている大西利都と恒吉良真、トップチームのトレーニングに参加している杉浦駿吾、そしてU-18日本代表として静岡でのSBSカップに参加している池間叶らがおらず、三木隆司監督もローマに遅れて合流しているために不在。これだけ見るとかなりの戦力ダウンに思える中、選手層の厚みを見せた格好とも言える。ちなみに土曜日にはトップチームとの練習試合も組まれており、U-18は3日連続のゲームというハードな日程に。だからこそに選手起用は多彩にもフレキシブルにもなり、この大会ならではの組み合わせが見られたようで興味深かった。
先に行われたB戦では開始早々の14分に失点し苦しい展開に。立ち上がりから強度高く押し気味に試合を進めていた名古屋U-18Bだったが、フィニッシュの局面になかなか持ち込めず、シュートは距離を問わず相手の身体を張ったディフェンスにことごとく阻まれた。1トップの伊藤ケン、シャドーの石田翔琉と中篠遼人は運動量も多く機敏に動き、左右ワイドの丸山世来人と千賀翔太郎も縦への推進力を出していたが、どこで点を取りたいかがやや曖昧で、そこが相手の守備に食い下がる時間を与えているようにも見えた。神谷輝一と大澤菱のボランチコンビは力強く、オディケチソン太地、小室秀太、山本陽暉の3バックも良い対応が多く、GK加藤直太郎も落ち着いていたが、攻撃の不調が序盤の勢いを削いだところは確かにあった。
後半に入りメンバーの半数を入れ替えた名古屋U-18Bだったが、昌平が暑さや疲労で強度を落とす中で速攻やカウンターの場面が増え、特に伊藤が決定的な突破や持ち出しを見せる場面が頻出したが、これらがことごとく得点につながらず、ヤキモキする時間が過ぎていく。後半31分になってようやくそのひとつが伊藤、石田、最後は大見咲新という連係の中で大見のゴールとなって同点に追いついたが、その後の決定機は決まらずに引き分けに終わった。普段、プリンスリーグを戦う1年生主体のメンバーたちは昌平の1年生たちとの対戦に何をつかんだか。ただ全体的に感じたのは、個の能力の面で確かな成長が感じられる選手が多かったということだ。
そして薄暮に差し掛かろうかという18時半キックオフで始まったAチーム同士の対戦は、前半と後半でまったく様相が異なるものとなった。GKの萩裕陽が午前中にトップチームの練習に参加していたため、この日の守護神は濱崎史揮が務めたスタメンの11人は、3バックが右から森壮一朗、青木正宗、鶴田周の3人に。ボランチは松嶋好誠と八色真人、ワイドは右に伊澤翔登、左は野中祐吾、前線は西森脩斗を頂点に西森悠斗と神田龍が配された。試合はキックオフ30秒にも満たないタイミングで神田が思い切りよくシュートを打ったまでは良かったが、ひとたびボールが昌平に渡ると名古屋U-18の劣勢がスタート。ゾーンで守っていた名古屋U-18だったが昌平の巧みなパスワークとポジショニングに翻弄され、追えども追えでもボールが捕まらず、追った先には何人もフリーの選手がいるような状況が続き、右往左往する前半を過ごした。10分には虚を突くフィードに飛び出した濱崎がかわされて無人のゴールに流し込まれ、失点。以降はさらに余裕が出た昌平にまさしく“チンチン”にされた。
それでも名古屋U-18がたくましかったのは、選手たちから守り方の変更の提案があり、飲水タイムなど試合が止まったタイミングでチーム全体で共有。マンツーマンでまずは球際を作るところからスタートすると、守備の無駄走りが減ってマネジメントが安定し、速攻やカウンターにも形ができ始めた。その中で37分に左サイドでパスを受けた野中が仕掛けると相手のファウルを誘ってPKを獲得。「国体で計3本外しているんで良い思い出がない」(野中)と不吉な予感もよぎる中、大げさなまでに集中する“儀式”を経て自ら仕留めた同点弾で試合の流れはまずひとつ押し戻された。野中のアジリティとコンタクトの強さは仕掛けが失敗してもすぐさま奪い返せるバイタリティにも後押しされ、左の武器としての輝きを放っていた。
ハーフタイムでさらに戦い方を整理したチームは後半開始2分でPK献上というアクシデントもあったが、相手がこれをバーに当てて事なきを得ると、12分の中原蒼空の投入を境にギアチェンジ。この夏は遠征続きだった昌平もこのあたりから疲労感がプレーに出るようになり、一気に形勢が逆転した。思えば後半の頭、玉田監督は「打ち合いにしないよ!」と選手たちに冷静さを保つよう指示していたが、勢いづいた名古屋U-18によってその流れは押し留められないものにはなっていたのだろう。最前線にドリブルの速い中原が入ったことによって前線に時間ができた名古屋U-18は中盤との縦の連係でDFライン背後を突く動きが増え、15分にはお手本のような3人目の動きから神田龍が逆転のゴール。そこからは攻守における中盤の支配力も増し、後半から出場の野村勇仁や余裕たっぷりに攻撃をコントロールした西森悠によってFWもウイングバックも気持ちよく縦へ縦へと突破を仕掛けるように。
後半31分には野中の左サイド突破からのクロスを西森悠が打ち込み、39分には西森悠のパスを伊澤が仕留めてあれよあれよという間に3得点。それ以外にも少なくとも二度の決定機を生んだ名古屋U-18は昌平を圧倒し、前半の苦しい表情が嘘のように笑顔で4-1の快勝を手にした。修正力の高さと強度を落とさず走り抜いた結果は相手の疲労度を差し引いても上々の手応えを得られるもので、二つ目の対戦カードとなる23日の福島・尚志戦への期待感も高まった。“監督代行”を務めた佐枝篤コーチは「今日はほんとに選手たちが自分たちで自分たちの流れに持ってこれたのが1番大きかった」と称え、敵将も「両方のゴール前のところでの差は感じた。そこで決めきるとか、しっかり守るとか。その力は全然相手の方が上だった」と高評価。プレミアリーグ再開へ向けた強化の場、という目的にふさわしい勝利で、名古屋U-18はまたひとつ、いい経験をその心身に刻み込んだことだろう。
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