【クラブニュース】今季のSDGsアカデミーがいよいよ始動。2024年は「在留ブラジルキッズプロジェクト」として社会的課題に取り組む!
本日8月20日、トヨタスポーツセンター第2グラウンドのクラブハウスにて、恒例となっている名古屋グランパスSDGsアカデミーの今季の取り組みがスタートした。昨年は地産地消をテーマに最終的には地元食材を使ったレトルトカレー制作を行なったが、2024年のテーマは「多文化共生」への働きかけ。クラブハウス近くにはブラジルにルーツを持つ方々が多く住む豊田市保見地区があることから、在留ブラジルキッズを中心として、海外ルーツの方々がより住みやすい社会の実現に向けて、プロジェクトを立ち上げることとなった。
今回行われたのは初回インプットセッションで、5月30日に関係者によって先立って行われた目標設定セッションを受け、U-18の選手たちに文字通り今回の課題についての“刷り込み”が行なわれた。集まったU-18、U-17の選手たち21名は昨年のSDGsアカデミーに参加した選手も多く、活動そのものの概要は理解してるものの、テーマが違えばやるべきことも変わってくる。始まって最初のSROI測定についてのアンケート、グループインタビューを経て突入した本題は、NPO法人「希望の光」から招かれた山家ヤスエさんによる在留ブラジル人についての現状把握からだった。
山家さんはふたつの“ワーク”をもって選手たちに日本に暮らすブラジル人の現状を分かりやすく説明した。ひとつはその場にいたポルトガル語を解するスタッフや参加者の協力を得つつ、「小学校1年生程度の言葉を使って、猫の絵を描く説明を聞いてもらう」というもの。スタートしてずっとネイティブの速さでポルトガル語での話を続ける山家さんを、選手たちはただポカンと聞き流すしかなかった。つまり、これが日本の学校に通うブラジル人の子どもたちの状況と同じというわけだ。大人の参加者からも「ここで生きていけるのか不安になった」という感想が漏れたこのワークは、環境面でのブラジルキッズの理解を深めるものとして、とても効果的に見えた。
二つ目のワークは身体を動かすことで視覚的にブラジル人の日本における立場を理解しようというもので、選手たちは13歳のブラジル人国籍ガブリエラさんというキャラクター設定の上で、いくつかの質問に答えることに。逆に大人の参加者たちは自分の立場で同じ質問に答えることで、両者の間にある差異が見えてくるのは興味深いものがあった。これらのワークを通じて現状把握に努めた選手、参加者たちは次の段階に進み、今度はSDGsそのものについての座学を通してやるべきことの輪郭を明確にしていく作業へと移っていく。
後半戦に突入したインプットセッションはまず昨年も同じ役割を務めた染谷栄一氏による講義から再開。午前中にトレーニングを行なっていた選手たちはこのあたりでかなり睡魔との戦いになっていたが、そこは染谷氏の巧みな話術によって持ち堪え、笑いも交えてSDGsそのものに対する理解、またアスリートの持つ影響力についての理解が進められた。神奈川大サッカー部が実際に行なっている取り組みなども例に挙げつつ、しっかりと座学をこなした後はこの日の総まとめである。参加した企業、団体の大人たちと選手たちがグループになり、ここまでの成果から思いついたアイデアを列挙していく。サッカーを取っ掛かりにしたもの、日本に馴染んでもらうための工夫、逆に相手の文化を理解するための努力などなど、多くのアイデアが出たことは今後の活動をより円滑に、また充実したものにしていく予感がした。
全体で3時間という長丁場だったが、とても有意義な時間になったことは一目瞭然。プロジェクトはここから12月下旬にかけて振り返り含めてあと5回のセッションが予定されており、次回はさっそくブラジル人キッズとの交流会が計画されているとのこと。「社会性のある選手の育成」を掲げる名古屋グランパスアカデミーとして、ひとつ大きな指針を示す場でもあるこの取り組み、ここからどのように発展していくかが楽しみである。
杉浦駿吾選手
Q:こうしたことについて考えるのは、なかなかない機会だと思いますが。
「いやあ、前回の“地産地消”は受ける前から少しは考える機会っていうのがあったんですけど、今回のこの在留ブラジル人の方々のことっていうのは、ほんとに考えることすらなかったなっていうのは今日思って。実際にああいう話を聞いて、ほんとに考える必要がある問題だと思ったし、自分たちはサッカーをやっていて、すごい影響力があるっていうのも感じてるんで。そこをほんとにうまく使って少しでも貢献できたり、このSDGsアカデミーっていうのをやってる意味を、今後またセッションを重ねるごとに増やしていけたらいいなっていうのは今回感じました」
Q:最後には今後へのアイデア出しもありましたが、どんなアイデアを出しましたか。
「ブラジルといえばサッカーで、自分たちもサッカーを得意としているっていうところがあるので。そこにひとつ共通点が持てているっていう風にはアイデアを出させてもらって。他にも日本のスポーツをブラジルの人にも体感してもらえたらっていう案は出しました。野球だったり、相撲だったり」
Q:まだこれはスタートです。今回の取り組みは自分にとってどういうものにしていきたいですか。
「こういう、今回はクラブを通してですけど、社会の問題を考えて、社会人の方と触れ合うというか、一緒に考えていくっていう機会はほんとに貴重だと思うので。ほんとに大事にしながら、自分は来年、いち社会人として生活していくんで、その糧にしていけたらなって思います」
□NEXT PAGE <写真 SDGsアカデミーの様子>