赤鯱新報

【赤鯱探訪】角田誠編① 「勝たせられる選手を選ぶ。そこに忖度はない」

角田誠

赤鯱探訪 第23回

角田誠
(2004~2006 名古屋グランパス所属)

彼のことを知るサポーターはもしかすると“オールドファン”と呼ばれるのかもしれない。かく言う筆者も若手時分に数度、インタビューをしたことがあるぐらいで、あまり濃い取材をしたことはなかった。現栃木の強化部長である山口慶さんと同級生で、アテネオリンピックの代表候補。加入当時の名古屋もまた多士済々の顔ぶれで、しかしその中でもしっかりとした存在感を見せていたことは記憶に残っている。キャリアのピークは京都に戻り、仙台に移籍した時だっただろうか。攻撃力のあるDFはパワフルなボランチとなり、J1リーグ345試合に出場したレジェンドのひとりとなった。今回、レイラック滋賀(JFL)に所属する名古屋OBふたりに取材を申し込むにあたり、その調整期間中に滋賀の監督に電撃就任したということで、急きょインタビューをお願いし、ご快諾いただいた。充実したキャリアを感じさせる言葉の数々、指導者の道をはっきりと認識して歩んできたセカンドキャリアのこと、短い時間ではあったが多くのことが感じ取れた時間を、ぜひ共有できればと思う。

赤鯱探訪・角田誠編①
「勝たせられる選手を選ぶ。そこに忖度はない」

Q:急遽という形ではあると思いますが、こうして監督業をスタートすることになりました。レイラック滋賀の監督を引き受けられた経緯というのはどういったものだったのでしょうか。

「ここのオーナーとは昔から話していて、自分たちが知り合いだったということもあり、今回の監督が変わるタイミングでお話をもらったというところですね。もちろん仙台でコーチをやっていて、その契約もまだあったんですけど、仙台ともしっかり話をして、スムーズに契約解除ということになりました。仙台の方たちも『監督だったら、それはやった方がいい』っていう話をしてくれたので、スムーズに話は進みました」

Q:引退後すぐコーチになられたと思いますが、指導者に関してはずっと興味があったというか、なりたいものでしたか。

「そうですね。仙台に行ったぐらいの頃から指導者になりたいなってのは思っていて、ライセンスの準備もしていて。S級にもここ数年トライしてるんですけど、なかなか行けなくて。それを取ってからかなと思っていたけど、その前にこのタイミングがあったので。もう、それはやっぱりね、JFLなんてほぼほぼプロだと思っているし、そのチームの指揮を執れるなんて、そんな経験を逃す手はないと思って、ここに来ました」

Q:コーチ業も少しやられた中では、選手、コーチ、監督とそれぞれ同じ現場とはいえやることが全く違う役割を経験されています。例えばコーチと監督の差でいえば、どういったところに感じられますか。

「うーん、大変だとは思っていたけど、まだやり始めて1週間ぐらいですけど、めちゃくちゃ大変で(苦笑)。もう、 ちょっと想像を絶するというか、想像していたのともまた違う、ほんとに考えなアカンことが多くてっていうのが一番ですよね。まだ試合もスタートしていない中で、これなんでね…。試合が始まったらどうなるのかって。僕の場合は経験がないんで、どういう風にやっていったらいいっていう基準がないから、それを今は作っている段階というか。自分の中で試行錯誤しながらやってるんで、だからその大変さもあるっていうところはありますね」

Q:コーチとしての職分と監督としての職分の、決定的な違いは何でしょうか。

「まあ、決定権があるってことじゃないですか。全てにおいて。そこに責任もかかってくるという。やっぱり抱えているものが圧倒的に違いますよね。練習のスケジュール、内容、全部自分が決めないといけないですし、それにまだ慣れてないという。最近はいつも、練習終わった後にちょっとぐったりしてるんで(笑)」

Q:自分が練習を作る、練習をさせるということになると、自分が選手として練習をしていた時とは練習そのものの感じ方や考え方も違いますか。

「そうですね、全然違いますよね。そのメニューをやれる人数から、どれぐらいの負荷で、やっぱり暑さも考慮して、選手のコンディションも見ないといけないですし。やりたいトレーニングが全部できるわけでもないですし。時間の限界はあるんで、そこをどうやるのか。特に今はこの暑さなのでね、長いことはやれないですから。今日は少し長くなってしまったけど、開始時間も最近は30分早めて朝の8時半からにしているし、特にこのチームは働いている選手もいるので。そういう部分はもう少し考えないといけないし、かといってやらないと結果は出てこないから。少しずつわかってきたところはあるけど、今まで以上に考えることが多いんでね。ほんと、練習後はちょっと倒れてますね(笑)」

Q:先ほどJFLはプロみたいなものとおっしゃられました。実際に指導してみて、プレーを見てみての選手たちのレベルやクオリティはいかがでしたか。

「高いと思うんです。けど、JFL全体のことを自分があんまり知らないので、何とも言えないところもあって。これでこの順位なんか…っていうのは思っているし、上に行くポテンシャルはあるんじゃないかなって思うんですけど、それは相手あってのものなんでね。ある程度は、ほんとに始まってからわかることも多いと思っています。今はその想定の範囲でいろいろとやっているけど、実際には始まらないとわからないっていうのは思ってますね」



Q:ご自身は選手としてもJ1で300試合以上の試合に出られていて、いろいろな経験から見て、感じることがたくさんあると思います。監督としてどんなことを教えていきたい、どんなことをさせていきたいと思いますか。

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