【U-18レポート】攻撃の充実度と、試合運びの反省点とが入り乱れる快勝劇。高体連の強豪相手の勝利で、チームは勢いづいて“クラ選”へ。
■高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST 第8節
2024年7月13日 18:00 KickOff トヨタスポーツセンター 第2グラウンド
名古屋グランパスU-18 4-2 神村学園高等部
得点者:2分 大西利都(名古屋)11分 杉浦駿吾(名古屋)23分 大西利都(名古屋)54分 名和田我空(神村学園)67分 鈴木悠仁(神村学園)78分 杉浦駿吾(名古屋)
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大いに反省点を含んだからこそ、より重厚な勝利となった。次週からクラブユース選手権の開幕を控えるタイミングで行われたプレミアリーグWESTの延期分8節は、高体連の強豪・神村学園を迎えて行なわれ、4-2の勝利を得た。3点をリードしながら2点を追いつかれての勝利は辛勝の空気感も混じりながら、だからこそに勝利の価値も増す。
試合当日の朝に森壮一朗が風邪で熱発、38度超では無理もできず、急きょ小室秀太のスタメン起用が決まった試合だった。小室は「それを聞いた時にはすごく緊張だったり、不安だったりがあった」としつつも、18時キックオフにも助けられて何とか心身を整えてプレミアの舞台へ。3-4-3の布陣には右に野中祐吾、シャドーに杉浦駿吾などスタメン復帰の選手もおり、控えの西森悠斗含めて次週へ向けた戦力増強の面でも大きな期待がされた試合だった。
神村学園のビルドアップに狙いを絞った戦いは開始2分で大西利都が先制点を挙げ、11分にも杉浦駿吾がスーパーゴールを叩き込んで主導権を握った。17分には小室が与えたPKを相手キッカーのミスもあって萩裕陽がストップし、23分に相手DFの甘いパスをカットした大西が難なく詰めて点差を3点に広げる好展開は、名古屋の理想的な展開であるが故にその後が重要にもなる一戦に。ビルドアップを諦めない神村学園に対しプレスは利き、前に出てくる相手に対して杉浦や大西、西森脩斗や野中のカウンターは効果的だったが、シンプルに狙えてしまえるからこそ質を欠くところも増え、さらなる追加点が奪えぬままに試合を折り返した。
次から次へと大きな展開を繰り返した前半の疲れは後半になって選手たちの動きにも影響し、加えて神村学園がビルドアップを諦めダイナミックな攻撃にシフトチェンジしてきたことで、後半の戦いは様相を一変。54分に名和田我空の個人技によって1点を返されると、67分にはシンプルなクロスでの攻撃を仕留められてあっという間に3-2。2失点目の前には3人交代で流れを変えようとしていた矢先のことだっただけに、ピッチ上の劣勢の雰囲気は嫌なものにも感じられた。一方で名古屋の攻撃の迫力が減退したということでもなく、杉浦を中心とした縦への推進力は相応に神村学園の脅威にもなり、打ち合いに負けなかったことでダメ押しの瞬間にもつながっていった感はある。
76分、左サイドを突破にかかった杉浦がうまく相手DFと入れ替わると、たまらず手をかけてしまったところでPKを奪取。杉浦がこれを冷静に決めて4-2とすると、残る15分間ほどはとにかく守りを締めて攻撃の怖さを失わない、勝っている終盤のゲーム運びを試される展開となった。前に出てくる神村学園に対し、前半と同様にロングカウンターで逆を取る流れは同じだったが、交代出場の神田龍などはダイナミックに運びながらも無理はせず、より確率の高いチャンスを活かすような選択を見せていたことは好印象だった。クラブユース選手権は連戦も激しく、ゲームコントロールの質が求められる場面も多く訪れることが予想される。強烈な個が揃う分、前に出れば行けてしまう名古屋ユースのカウンターは前述の通り、裏を返せば“攻め疲れ”と背中合わせにもなりがちで、そこも押し切ってしまうのは理想である反面、無理な攻めばかりになってしまえば要らぬ消耗を呼ぶばかり。このレベルの相手に対し、こうしたテストケースを経験できたことは、今季を中長期視点で見る上でも貴重なものだったと言える。
終盤には萩のビッグセーブ連発でも勝点3を維持し、4-2のまま試合は終了。この勝利で勝点を20に伸ばし、上位争いにしっかり食い込んだままにリーグ中断を迎えたチームはひとまず戦いの舞台をクラブユース選手権へ移す。勝って夏のタイトルに挑めること、良い反省点も得られたこと、戦力面でのプラスアルファも多く得られたことで、彼らには良い感触も加わっているに違いない。油断は禁物だが、自信は持っていい。彼らの強さは間違いなく、この勝利でもって重厚さを増したと思う。
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