赤鯱新報

【名古屋vsJSC】プレビュー:出でよ暴れろ“新戦力”。一発勝負の緊張感の中で、名古屋に新風は吹き付けるか。

■天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会 2回戦
6月12日(水)名古屋vsJAPANサッカーカレッジ(18:30KICK OFF/豊田ス)
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油断大敵の一言でしかない。ターンオーバーは必至、しかしJ1で上位を争うチームとして、北信越リーグのチームに負けるわけにはいかない。JAPANサッカーカレッジはここまでのリーグ5戦で5勝、27得点1失点と確かに好調で、長谷川健太監督が警戒した190cmの長身FW渡辺亮太と上本直樹のふたりがそれぞれ8得点とこちらも絶好調。選手を入れ替えながら戦う上では3バックの総入れ替えも予想される中、勝負の分かれ目は間違いなくここの競り合い、デュエルの結果に左右もされる。ここを起点にピッチ全体で“格上”としての振る舞いをしたいところだが、自らも苦い経験を持つ指揮官は「基本的にはクロスゲームになるんじゃないか」と油断を排した。その立ち位置をはっきりした上で臨む一戦は、それだけに思いきった采配とプレーに期待したい。

こうした試合はやはりメンバー予想が楽しい。長谷川監督は基本的には「ノーコメント」としながらも、武田洋平と倍井謙の起用は明言。ここに直近のルヴァンカップでのベンチ入りメンバーを掛け合わせて考えれば、今回のメンバー構成がうっすらと浮かび上がってくる。3バックは吉田温紀、井上詩音、そしてU-18の森壮一朗のスタメン起用も現実的な選択肢だ。ボランチの枚数不足を思えば吉田は中盤に回し、行德瑛を右に配するのも現実的な選択肢ではある。負傷明けの吉田をフルで使うのもリスクがあるため、ボランチは米本拓司と椎橋慧也、内田宅哉と吉田の4枚でプレータイムを分け合うというのが良策にも思える。3バックはとにかく失点ゼロをマストに監督へのアピールをしたいところで、その上に個人能力の誇示を目論みたい。

両ウイングバックは左は鈴木陽人が濃厚だ。主力に負傷者が続出している手薄なポジションで、練習試合もなかなか組めない過密日程の中ではまたとないチャンスと言える。断片的に見られるトレーニング風景では1対1からのシュートのバリエーションや、もちろんクロスの質の部分にも鍛錬を続けていることがうかがえ、最近は身体に厚みが増したようにも見える。パワーやスピード、コンタクトの強さなど超えるべき課題の多い小兵の選手だけに、そうしたファンダメンタルの部分での成長や改善もプレーで表現してもらいたいところだ。右はもちろん、と言うのも妙なのだが、久保藤次郎の奮起に期待である。相手のことを言ってはいけないが、このレベルでは無双するくらいのパフォーマンスを見せなければ、リーグ戦での出場機会には手が届かない。左で、という考え方ももちろんあるが、彼の能力はやはり右でこそ発揮されるものだ。縦横無尽に、シュートもクロスもドリブルもパスもすべてを彼の選択肢に持ちつつ、右サイドを制圧する姿が見たい。

前線は酒井宣福の復帰戦となればチームに追い風も吹く。ユンカーはしばらくの休養が必要そうで、永井謙佑の状態は不明、パトリックは練習に復帰していたが、ポリバレントに働けるストライカーが増えれば山岸祐也の負担も軽減できる。シャドーには榊原杏太と倍井のコンビが確実視されるが、ターレスの起用も一方では考え得るチョイスと言える。それは発熱があった榊原の体調面がどこまで回復しているかにもより、倍井はリーグ戦での起用も視野に入れれば、この3人で2シャドーを回していく算段ではと読める。ここに“もしも”の時のジョーカーとして山岸や森島司、中山克広、三國ケネディエブスらがベンチに控え、備えとしての役割を担えば万全だ。油断はせずとも相手の勢いを受けてしまうことはままあり、まさかの展開は警戒網を潜り抜けることも多数。それを乗り越えてこその天皇杯タイトルであり、ここから次の主力が生まれていけばチームにとっても有意義さは増す。ルヴァンカップにおいては中山や榊原がそうしてきたように、「ここで爪痕を残せるかどうかにかかっている」選手たちの躍動には今から楽しみな気持ちも膨らむ。

長谷川監督はこうも言った。「クラブのため、応援してくれるサポーターのためという部分もあるが、自分自身のためにも頑張ってもらいたい」。その結果が独りよがりの個人プレーに終始してはいけないが、ローテーションあるいはターンオーバーという状況では連係面というのは表現しにくいところがあるのも確か。まずは自分を表現し、そこに相互理解を上乗せし、試合状況に応じてプレーする。まずは結果、もちろん内容。しかしこの場合の内容という部分には、自己表現の集積であってほしいという願望も込められているのではないか。主力メンバーで構築されるいわゆる“Aチーム”には、既に確立されたところも多く、食い込むには指揮官に「使いたい」と思わせる特徴が不可欠だ。絶対的に守る、圧倒的に突破する、決定的にチャンスを仕留める。勝負を左右する局面でいかに自分が有用な選手であるかを証明し続ければ、さらなる好機は巡りくる。

簡単なゲームではない。しかし難しいゲームにしてもいけない。名古屋の立場からすれば無難な試合に仕立てていくべきで、「危なげない」と結果に対して修飾できるような展開になれば成功だ。難易度を一番に感じているのはスタッフたちのはずで、勝つだけで十分に評価される戦いには違いない。先に進んでこそのトーナメント、勝ち上がってこその天皇杯である。一発勝負のヒリつく感覚がチームに新たな風を吹かせることを願って、チャンスを得たメンバーたちの雄姿を見守りたい。

reported by 今井雄一朗

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