赤鯱新報

【クラブニュース】名古屋グランパスが「在留外国人キッズ向けフューチャートークセッション」を開催。ターレス、佐々木通訳が子どもたちに自らの経験を伝える良い機会に。

子どもたちの将来の夢を聞き、笑顔がこぼれる。

本日11月19日、名古屋グランパスのクラブハウスにて、愛知県在住の外国にルーツのある子どもやその家族を支援する「にわとりの会」の企画に名古屋グランパスが協力する形で「在留外国人キッズ向けフューチャートークセッション」が行われた。イベントには外国にルーツを持つ子供たちやその家族が参加。名古屋グランパスからはターレスと佐々木トニーユタカ通訳が出演し、様々な質問に自分の経験をもとに答えた。高校生の頃から日本で過ごしている21歳のターレスと、10歳の頃に日本に来た40歳の佐々木通訳の経験談はとても含蓄があり、話を聞く子どもたちの表情が常に真剣だったのが印象的だった。

イベントは最初、あらかじめ用意された質問に答えるところからスタート。「未来は自分で選ぶことができる」というテーマに基づき、ターレスにはサッカー選手になるために、佐々木通訳にはなぜ通訳になったのか、という部分について日本語、ポルトガル語の両方を使って伝えられ、興味深い内容も多々。たとえばターレスはロンドリーナに居た頃に日本へ行く話があり、父親から「文化なども学んできなさい」とアドバイスを受けたと述懐。プロになれる保証はなかったが、「努力の結果プロになって、家族も呼ぶことができ、いずれは日本国籍を取りたい」と宣言した。日本の部活文化も慣れるのは苦労したようだが、いつもポジティブに考えていくことで乗り越えてきたと言う。プロサッカー選手は父親の夢でもあり、決心は堅かった。

もともとは仙台の通訳として働いていた佐々木通訳は2014年、ブラジルW杯を機に大会のサポートをしようとクラブを辞め、通訳として大会に参加していたエピソードを披露。リオデジャネイロオリンピックも同様に参加したとのことで、「多言語が話せるのは良いこと」と、ダブルリミテッド(日本で暮らす外国にルーツを持つ子どもたちが日本語の習得の遅れにより母国語・日本語ともに十分に発達していない状態)の子どもたちの境遇を前向きに捉えるヒントも伝えていた。佐々木通訳もプロサッカー選手を目指した人だったというが、それが叶えられずに通訳となったことで、「選手が自分の夢を叶えてくれている」と感じられると笑顔。「ブラジル人の適応にやりがいを感じています」と話す中では、子どもたちの目には感心の色が浮かんでいた。

いわゆる質問コーナーはターレスか佐々木トニー通訳が聞きたい人にボールを渡す形式で行われた。この「ボールトーク」は今後の名古屋のイベントでも使った方が面白そうな手法だ。

続いてはもちろん直接のコミュニケーションも。ふたりが話を聞きたい参加者にサッカーボールを投げ、受け取った人からの質問を受ける「ボールトーク」である。会場にはもちろんプロサッカー選手になりたい子どももおり、「サッカー選手になるために勉強したことは?」や「ターレス選手の今の夢は?」や、日本語学校の先生からは「トニーさんから日本語が上手くなるためのアドバイスを」や、子どもからも「サッカー選手になりたい子ども、通訳になりたい子どもに一言かけるとすると?」などの質問も。これらの質問にはそれぞれ、

「自己評価を高く持つこと、毎日成長したい気持ちを持つこと。恥ずかしからずにアドバイスを求めること」
「残りのリーグ戦に出ること、そしてゴールを決めてトニーと喜ぶこと。リーグ戦のスタメンになること」
「日本に住むと決めたからには日本語を話すことの重要性を理解すること。日本人の友達を作って日本語を話す環境を自分で作ること。愛知県に住んでいるメリットはブラジル人の友達ができることだけど、その”セーフティーゾーン”に居ることで言語能力が伸びなかったりするから」
「練習して、練習して、練習すること。そして諦めないことで、チャンスをつかめる。まずは自分を信じること」
「人は影響されやすい生き物。選手も通訳も、自分と同じ目標を持っている人と一緒にいることで情報ややる気がもらえる。自分と同じ夢を持っている人たちと一緒にいること」

と、ふたりは回答。答えるたびに子どもたちからは感嘆の声が上がり、これだけでも十分な価値のあるイベントだったと言えるだろう。一通りのトークパートが終わると子どもたちによるグループセッションが行われ、「今回のイベントで感じたこと」という発表も行なわれた。子どもたちはそれぞれの感性でターレスと佐々木通訳の話を理解し、しっかりと自分たちの言葉で話し、ふたりも拍手で子どもたちを称えた。とても良いイベントになったことでクラブからはサプライズプレゼントも用意され、クラブハウス見学やふたりのサイン会、写真撮影もピッチで行なえることに。これには参加者全員が大喜びで、満面の笑顔のままにイベントは終了した。イベント後にはターレス、佐々木通訳ともに経験を伝えられた機会に感謝。愛知県のチームならではの社会貢献として、改めて貴重なものだと思える素晴らしいイベントだった。

最後はピッチ内でクラブハウスをバックに記念撮影。

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