赤鯱新報

【柏vs名古屋】レビュー:まさかの公式戦3連敗。スコア以上の“惨敗”に、名古屋はらしさを見つめ直す時。

一度手放した流れを取り返すのは、至難の業だ。しかし名古屋は今季、それを何度もやってのけたはずだった。そして大抵の場合、それはしっかり相手に対処し、流れが変わるのを見極めたからこそ為すことができていた。後半になれば前半以上に相手の守備はソリッドにもなり、狙っていた形はことごとく先手を取られてボールロストへつながった。奪ったボールを時に素早く、時にじっくりとつなぐ手法はこの日については柏が上手で、守備の粘り強さもこの日の柏は十分なものを見せていた。後半開始早々の47分には和泉竜司との時間差ワンツーでエリアに侵入した山田が、57分には山田のスルーパスに抜け出した前田がゴールに迫ったが、いずれもDFの対応にさばかれている。59分には重廣のアーリー気味のクロスに酒井が飛び込むもわずかに届かず、ここで長谷川健太監督は流れを変えるべく交代を決断。3枚替えで一気に試合を決めに来た。

だが、柏はその2分前に勝負手を打ってきてもいた。温存していたマテウス サヴィオと細谷真大を同時投入し、攻撃のトランジションに怖さは倍増。丸山は「チームとしての士気が向こうは上がった」と語ったが、確かにそれまでの柏は前線にボールが渡った時のもうひと加速が足りない節はあり、それが名古屋にとっては展開を楽にしていたのだが、空中戦でも地上戦でもゴリゴリと前にボールを運べてしまう細谷と、藤井を引きずってでも前進してしまうサヴィオの投入は明らかにピッチ内のパワーバランスを変えてしまった。ほぼ同じ時間帯に両監督が打った交代策のどちらが功を奏したかは、残酷にも結果にそのまま表れている。名古屋は3枚替えでほぼベストメンバーの布陣になったにもかかわらず、有効な攻撃を繰り出す前に均衡を破られたのだから、ショックも大きい。細谷の起点、仙頭が絡み、サヴィオから戸嶋へと渡っていく攻撃はテンポよく、低く抑えられたシュートはランゲラックの伸ばした手を逃れてネットを揺らした。攻撃に迫力が出せず、守備に負担が必然的にかかっていく中での守備陣の“決壊”は、試合を決定づけるに十分なインパクトがあった。

名古屋の反撃は実らなかった。失点後すぐさまユンカーを入れるも焼け石に水、さらにその5分後には河面旺成を入れてセットプレーの精度向上にも策を講じた。しかしそこから生み出せたのは74分の前田のシュートぐらいで、89分のペナルティエリア前の直接FKはトリック失敗で蹴るまでもなく相手ボールに。チグハグ感は加速しアディショナルタイム突入後には柏の時間つぶしのボールキープの流れの中で、ようやく奪い返したゴールキックをランゲラックが少しでも速くつなごうとやや雑に蹴ってしまい、態勢の悪い稲垣のパスはさらに雑になり、サヴィオに渡って易々と決められた。追加点を“献上”とはこうした文章表現にはしばしば登場する言い回しだが、まさに献上といった安い失点によって、名古屋は自ら試合を終わらせた。終わらせてしまった。

ターンオーバーが裏目に出たとは思わない。試合中の様々なタラレバが、この日のチームに勝つチャンスがあったことを、勝てたメンバー構成であったことを示しているからだ。フィニッシュまで行けた数を考えればそれは精度の問題になり、その点でいわゆる“サブ組”の試合勘をとかばうこともできるが、それはむしろ選手に失礼だろう。そこで力を見せてこそのプロフェッショナルであり、重廣も「試合勘を言い訳にすると簡単ですけど、チャンスもらった時に仕留めないと」と潔かった。前田はさらに自分を責めるように、そしてひどく落ち込むように言葉のひとつひとつを絞り出したが、これだけ悔しがれるのだから次へと期待するしかない。天皇杯には次はないが、名古屋にはまだリーグ戦が、そして次週に再開するルヴァンカップが残っている。永井は言う。「こういう苦しくなった時に一人ひとりが自覚持って、責任もって。前向いてやらないと。連敗を抜けるには、僕ら選手がまず戦わないといけない。その戦っている姿を見て、しっかり後押ししてもらえるようにやっていきたい」と。ひとつの大会は終わったが、シーズンが終わったわけではない。公式戦3連敗は今季ここまでのチームを思えば逆に意外に思えることを、思い出してみるべきだ。開き直ってもいい、次の闘いはもう始まっているのだから。

reported by 今井雄一朗

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