赤鯱新報

【名古屋vs仙台】レビュー:接戦を支えた守護神の自信と仲間からの信頼。苦戦も勝利への執念を失わず、ラウンド16への道は切り拓かれた。

マテウス、稲垣、藤井、中谷進之介、そして5人目のユンカーまでしっかり決めた名古屋のキッカー人は見事だった。マテウスと中谷はGKの逆を突き、稲垣は「ギリギリまで、このタイミングまでキーパー見れば、あの強さで、あそこに蹴れば届かない」という駆け引きでネットを揺らした。藤井とユンカーはGKの届かないところに蹴るタイプのPKだったが、ふたりともシュートスピードが速く、度胸満点でこちらはやや冷や汗もかいた。仙台も4人目まではしっかり決めていたのだが、外せば負けという重圧の中での駆け引きは、ランゲラックに軍配が上がった。「説明するのは難しいんだけど」と笑った守護神は、経験則に裏打ちされた直感に従い「彼は右に蹴る」と決断。あとは思いきって大きな身体を飛ばし、シュートを弾くだけだった。「チームメートがこの試合、長い120分とPK戦を含めて頑張ってくれたからこその勝利だよ」。ナイスガイは最後まで自分の手柄とはしようとしなかったが、勝利を手繰り寄せた直接のプレーとして、彼のPKストップはそのまま勝因と呼べる価値を持つ。

J1とJ2の対戦ということを思えばやはりこれは苦戦ということにはなるが、仙台はソリッドでよく鍛錬された集団だったことは今一度忘れずにおきたい。「跳ね返す力は中のDFにはあったし、セカンドバイタル取りに行こうとしても、けっこうしっかり研究されててそこは切ってきた。最後の崩しきるところは難しかった」。交代選手のうち3人が足をつっての交代だったことを思っても、仙台が死力を尽くして戦ってきたことは間違いがなく、それゆえの膠着、それゆえの拮抗した闘いだったことは事実だ。そこを乗り越え、一丸となった戦力で打ち砕いた名古屋には手応えもひとしおといったところ。選手たちの言葉にも、自覚やタイトルへの強い意思が感じられる。

「ほんとに全員で、今日も延長戦含めて全員でバトンつないで、しっかり勝ちきれた」(和泉)
「強いチームはどういう勝ち方だろうが勝つんで、そこは大事だと思います」(稲垣)

まずは勝つ。みんなで勝つ。何が何でも勝つ。天皇杯の次戦は国立での新潟戦手前の8月2日、相手は浦和である。再びCSアセット港サッカー場での開催となるが、今度はいかなる環境下で、どんな試合になるのだろうか。一つだけ言えることは、その日の18人で死力を尽くし、勝ちにこだわる名古屋がそこにはいることだ。三冠の可能性を残すクラブのひとつとして、タイトルは一つとして軽んじることはない。

reported by 今井雄一朗

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