【フォトレポート】様々な苦境を乗り越え先制も、後半の2失点に泣く。プレミアWEST試合レポート。
■高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 WEST 第7節
2023年05月20日 11:00 KickOff/トヨタスポーツセンター(天然芝)
名古屋グランパスU18 1-2 神村学園
得点者:38′ 杉浦駿吾(名古屋)61′ 名和田我空(神村学園)90+4′ 西丸道人(神村学園)
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5月20日に行われたプレミアリーグWEST、神村学園高等部戦に臨む11人。後ろで気合のジャンプを見せているのは、1年生CBの森壮一朗。
先制されるも2点を奪って逆転勝利。同日に行われたトップチームの結果はその過程を勝利へと結びつけたが、U-18は逆転負けという悔しい結果を噛みしめていた。貴田遼河のプロ契約、2種登録の4名の選手もトップでの活動が増えてきた中では、ここ3試合のプレミアリーグを戦うメンバー構成は”ベスト”とは言えないものにはなっているかもしれない。しかし、「彼らがいないから負けたなんて絶対に嫌」とは選手たちの総意であり、それはおそらく監督やコーチを含めてのものだろう。負傷者が出るのも当たり前のことで、しかし戻ってくる者もいる中で迎えた神村学園との戦いは、そうした悲喜こもごもが入り混じった苦い結果となった。

実に524日ぶりというスタメン出場を果たした源平倭人。細身だがリズム感のあるドリブルで相手を翻弄していた。
レギュラーセンターバック、ボランチの要、そして代表クラスのサイドアタッカーを欠く中で組まれたこの日のスタメンは、さらにここまで右サイドバックで良いパフォーマンスを見せていた伊澤翔登も負傷で欠き、DFラインは右に岡本大和、左に池間叶を起用するまた新たな並びを見せてきた。ボランチには西森悠斗が入り、右のサイドアタッカーにはこれが524日ぶりのスタメンという源平倭人の名が。前節の米子北戦で途中出場し戦線復帰を果たしていた男は軽やかなドリブルと周囲を使う器用さを見せ、これまでとは違う色の選択肢をチームにもたらしている。岡本は右に入ったことでU-17日本代表の吉永夢希とマッチアップすることになったが、持ち前の対人守備の強さでその相手をほぼ抑え込む出色の出来。池間は左足のキック力を活かした背後へのフィードで杉浦駿吾や源平の推進力を引き出すなど、このメンバーでの補完力は良いバランスにも見えた。

ボールを奪って速攻に持ち込む那須奏輔。周囲を見ながらドリブルで駆け上がり、ラストパスを選択する。

那須奏輔からのスルーパスを右足アウトサイドで流し込んだのは杉浦駿吾。的確な判断が先制点を呼んだ。

跳び上がって喜ぶ杉浦駿吾。
それでも前半はボール保持力も高い神村学園にやや苦戦もし、一進一退の攻防が続く。那須奏輔と杉浦のツートップは那須がゲームメイカー的に振る舞うことで周囲のランプレーを活かしつつも機能し、得意のボール奪取からのファストブレイクで39分には杉浦が先制点も挙げた。貴田がトップ帯同になってからの杉浦の成長ぶりは目を見張るものがあり、決定力もシュートの数も日に日にその質と量を上げている。前半終了間際という良いタイミングでの先制には、後半の戦いをより楽にしてくれる期待感も十分だった。

後半には暑さの影響か、足がつる選手が続出した。
だが、と書かなければいけないのが苦しい。後半も展開としては変わらない中で、暑さもあってか運動量が落ち、足がつる選手も続出。61分には左右の揺さぶりについていけず、名和田我空に決められ追いつかれると、67分には3枚替えでリフレッシュを図るも劣勢の意図は濃くなるばかり。それでも1対1で負けずに果敢なオーバーラップでもチームを鼓舞していた岡本だったが、「もっとボランチの選手に自分が言って早く寄せさせることだったり、それが伝えきれなくて、簡単に揺さぶられてしまった」と反省しきり。リードを意識し受け身になったという反省も口にしていたが、確かに後半に入って攻撃面での勢いや縦への推進力は減退しているようにも感じた。単純な運動量でも神村学園に上回られることが増え、何とかしのぐ展開が続く中では守備陣の懸命の守備も見られたが、一方で厳しさは募った。

後半アディショナルタイムに逆転され、試合は終了。土壇場での敗戦に両チームのコントラストがくっきりと分かれた。
そして後半アディショナルタイム、やはり左右の揺さぶりで左から右へと展開された攻撃に、最後はクロスを西丸道人に頭で仕留められ、敗戦。これが12得点目となる相手エースはしっかり抑え込んできた中で、最後に仕事されたことにも悔しさは強いはず。「前の選手が1回も無得点で終わった試合がなくて、全試合で得点をチームとして決めている中で、自分たち守備は2試合しかクリーンシートがなくて」と岡本はうつむく。「やっぱり後半の終盤になってくると、イージーなミスが顕著に現れてくる」という感覚は経験のみが解決してくれる問題ではあるが、意識によっても変えられる部分ではあり、今後の精進に期待したい。

サポーターたちへの挨拶もやや意気消沈ぎみ。次はクラブユース選手権で仕切り直しである。
開幕から素晴らしい戦いを続けてきた名古屋U-18だが、有能な人材がいるからこそに立ちはだかる問題とも直面し、その解決策を全員でさらに見出していくサイクルへと今は進んできている。次週からはクラブユース選手権が始まり、プレミアリーグの再開は6月17日。新たな大会が始まることで心機一転、またここまでの経験を活かしたチームビルディングをもって戦っていってもらいたいもの。これだけの主力が不在でも、まだ戦える布陣を組める今年のチームはやはり充実したスカッドとも言える。名古屋U-18の次なる変化、進化に注目だ。
□試合フォト
- 最近はボランチでのプレーも増えてきた西森悠斗。
- 左サイドバックでのプレーとなったのは池間叶。
- 試合開始早々から大きな声で守備陣を動かすピサノアレクサンドレ幸冬堀尾。フィードの精度も上がっており、攻撃の起点としても観客をうならせる。
- 相手の攻撃を潰しに行く森壮一朗。スピードでも負けておらず、力感のあるディフェンスを見せる。
- 左サイドハーフに入った石橋郁弥。彼の突破力はこのメンバーの中では貴重な攻撃の起点になる。
- ゲームメイカー野田愛斗。内田康介不在の中では、守備でも身体を張ってチームの屋台骨を支える。
- センターバックから全体を引き締める佐藤俊哉。若い相棒を上手くコントロールしつつ、自らもパワフルにプレーする。
- 高い位置からボールにプレッシャーをかける那須奏輔。攻撃陣の中心人物だ。
- 実に524日ぶりというスタメン出場を果たした源平倭人。細身だがリズム感のあるドリブルで相手を翻弄していた。
- 積極的に縦への突破を仕掛け、自らもシュートを狙った石橋郁弥。
- この日は右サイドバックでのプレーとなった岡本大和。対人守備が強く、攻撃時にも積極的に高い位置でのプレーを好む。
- 少しでも相手が隙を見せれば囲んで奪いにかかる名古屋U-18の選手たち。炎天下とも言える気候だったが、その勢いは変わらない。
- 1対1は肉弾戦。源平倭人も相手のブロックにひるまず前進する。
- 源平倭人へのサポートは岡本大和、那須奏輔らが手厚かった。ボールが持てる選手という信頼感の表れか。
- クロスに飛び込む杉浦駿吾。彼のストライカーとしての能力は今が伸び盛り。
- 杉浦駿吾は自らボールを奪ってのドリブル突破、速攻も数多く見せた。
- 軽やかなタッチを見せる野田愛斗。彼の判断は速く、小気味よくプレーを刻んでいく。
- 相手はクロスが大きな武器。しかしそこには194cmのピサノアレクサンドレ幸冬堀尾が立ちはだかる。打点が高い。
- 後半はやや防戦が多くなった名古屋U-18。那須奏輔も積極的にシュートを狙ったが、守備に追われる時間もまた長かった。
- コーナーキックが流れたところで粘ってクロスを折り返す森壮一朗。
- 攻撃に厚みが出てこない中では、石橋郁弥らも懸命に突破を試みた。
- 守備に追われつつも何とか前線へと顔を出す西森悠斗。
- 那須奏輔とのアイコンタクトを図りつつ、縦パスをつける野田愛斗。
- 交代策も積極的だった後半、右サイドには切り札・野中祐吾も投入された。
- 複数ポジションでの起用は致し方ないところ。この日はボランチで青木政宗も起用された。
- 後半には佐藤俊哉に代わり、樋口凛人も登場。
- 1-1に追いつかれ、池間叶もシュートを狙っていく。
- なかなか杉浦駿吾のところにもパスが届かない時間帯が続き、突破の際に吠える姿もあった。
- 野中祐吾の逆サイドには、これまた切り札の八色真人が入った。
- 後半アディショナルタイムに逆転され、試合は終了。土壇場での敗戦に両チームのコントラストがくっきりと分かれた。
- ショックを隠し切れない選手たちを率いて挨拶にいく佐藤俊哉。
- サポーターたちへの挨拶もやや意気消沈ぎみ。次はクラブユース選手権で仕切り直しである。