【フォトレポート】開幕4連勝はならず、土壇場で追いつかれての勝点1に選手たちの悔しさもひとしお。U-18はさらなる研鑽の道へと想いを新たに。

良くボールに絡み、オンもオフでも試合に影響を与え続けた杉浦駿吾。テクニックも相当に高い。
奇しくも、結果的にはトップもU-18も、勝てた試合を引き分けた1日となった。23日に行われたプレミアリーグWESTの4節、今季初の高体連のチームとの対戦となった大津高校戦は、那須奏輔の今年初得点で先制し、追いつかれた後半に杉浦駿吾のゴールで突き放したが、アディショナルタイムに追いつかれてのドローという結果に終わった。相手のフィジカルに押し切られた格好となった試合にゲームキャプテンの大田湊真は「高体連のチームにはこういうシンプルな攻撃が多い。クリアが小さくなるだけでやられるし、もっとそこを突き詰めていかないといけない」と反省しきり。負けたわけではないものの、猛攻に耐えきれなかった末の勝点1に、チームの表情は暗いままだった。
序盤は名古屋U-18のゲームだった。鈴木陽人、石橋郁弥の両サイドは警戒され、なかなかパスもつけられない状況にはあったが、その分だけ中央の守備は厚くはなく、大田や長田涼平、内田康介らのフィードが背後のスペースへと通って行く。そこにこの日は絶大な存在感を示した杉浦駿吾、石橋らが次々と飛び込んでいき、那須奏輔も絡んでチャンスは増幅。13分には大田のフィードを杉浦が受け、持ち込んだところを最後は那須が仕留めて先制につなげた。前節には「早く得点が欲しいです」と苦笑いだった那須だけに、嬉しい今季初得点は彼の持ち味もたっぷりのコントロールショット。「あいつが持てば決まる気しかない」とは、筆者の近くで大喜びしていた貴田遼河の言である。

嬉しい今季初得点を決めた那須奏輔は、ネット外のメンバーたちと喜びを分かち合う。
これで勢いに乗るかと思いきや、チームは1点リードのあとのマネジメントでやや落ち着きすぎたか、いつものプレッシングの勢いが衰えると今度は大津が反撃を開始。上背とフィジカルに優る高体連の強豪は、ロングスローも利して名古屋U-18を押し込み、試合展開を逆転させていった。特に問題だったのはセカンドボールが拾えず二度、三度と波状攻撃を食らってしまうところで、その分だけ背後のスぺースは空きもしたが、「そこで強引にでも縦パスをつけて、攻撃を始めるっていう部分で、ちょっとビビっいてたのはありました」と大田は言う。リードを上手く使って試合を制御しようという気持ちがやや強すぎたせいで、逆にプレーは消極的にもなってしまったわけだ。後半、57分の失点もシンプルなアーリークロスからヘディングシュートを叩き込まれた。相手の傾向を考えても、自分たちの強みを考えても、やらせてはいけない形ではあった。
それでも70分には石橋の突破から杉浦が個人技でゴールを決め、一度は勝ち越している。スピード感、運動量、オンとオフとにかかわらない試合への影響力を見せていた杉浦はU-17日本代表候補の実力通りといったところ。「自分の強みはボールを持っていないところでも発揮できる」と彼は言うが、柳下幸太郎フィジカルコーチも「いま、チームでそこが一番出せるのが駿吾」と証言する。先輩の貴田遼河のルヴァンカップでの活躍にも刺激を受け、ここからどこまで伸びていくかは楽しみなところだ。鈴木陽人、貴田、那須、大田、そして杉浦と、試合ごとに様々なポジションの選手が結果を残し続けるのもこのチームの強みで、「誰が出ても強いグランパス」という大田の言葉も、理想ではなく現実として見せられていることが順位にもつながっている。
ただし、試合はアディショナルタイムに追いつかれ、同点に終わっている。大津は劣勢を跳ね返すべく割り切ってセットプレー、ロングスローを多用し名古屋U-18を追い詰めてきた。序盤はしっかり跳ね返せていた相手のフィジカルも、疲労が溜まれば徐々に競り負ける場面も増え、またロングスローの存在が精神的にも名古屋U-18を追い詰める。単純なクリアは相手のロングボール、クロス、ロングスローにつながると思えば、プレー選択にひとつストレスがかかるのは自明の理。大津とてそればかりのチームではないだろうが、追いつくため、勝つためにこの試合はそこに割り切りを見せてきた。失点の責任を負う大田は「相手がすごく引いてくるのはわかっていたので、そこで強引にでも縦パスをつけて、攻撃を始めるっていう部分でちょっとビビってた」と、攻守両面での消極性が出てしまったことを、引き分けの要因として挙げる。攻め続ける姿勢と守りのバランスをいかにしてとるかは、今季のテーマになっていくのかもしれない。
負けたわけではなく、リーグの首位の座は依然として彼らのもとにある。次週はプレミアリーグの試合がなく、反省点を見直し長所をブラッシュアップする時間もできた。3連勝、のち1引き分けは素晴らしい成績であり、むやみに良くなかった部分を抽出することなく、前向きに次の一歩を踏み出してほしい。重要なのは意識の持ち方であり、試合をいかにして勝ちに行くかという部分では、”パワープレー”に徹してきた大津と考え方は変わらない。自分たちの力を最大化し、勝率をどこまで上げながら戦えるか。それは毎試合の経験によっても深まるものであり、練習で培った自信なくして持ち得ないものだ。
□試合フォト
- 4月23日に行われたプレミアリーグWEST、大津高校戦に臨む11人はこのメンバー。負傷の貴田遼河だけでなく、ピサノアレクサンドレ幸冬堀尾もメンバーを外れた。
- 若い選手たちを支えるサポーターたちをバックに前半開始前の円陣。貴田遼河と鈴木陽人が揃うと絶叫から始まるのだが、このメンバーだと落ち着いた感じで立ち上がり。
- 序盤は名古屋U-18のペースだった。大津が得意とする空中戦でもしっかり渡り合い、浮き球の処理が不安定な相手に付け込むように、敵陣へと侵入していく。
- この日は右サイドハーフでの出場だった石橋郁弥。縦への推進力を随所に見せた。
- 豊富な運動量とピッチ内最速のスピードで相手の脅威となり続けた杉浦駿吾。ちなみに前半、筆者の隣りにはベンチ外メンバーが数人観戦していたのだが、口を揃えて「あいつ速すぎん?」と大盛り上がりだった。
- セットプレーのチャンスを狙う大田湊真。ゲームキャプテンの責任感もあってか、シーズンが開幕してぐっと顔つきが精悍になった印象。
- ボランチの内田康介。チームの強みであるサイドを警戒され、自分のランニングも含めて好機を探っていたと語った。
- ロングフィードからチャンスを作っていた序盤の13分、大田湊真のパスから杉浦駿吾が持ち込み、最後はかっさらうようにして那須奏輔がコントロールショットを沈めた。カメラのピントが合っていないのは、隣にいたベンチ外メンバーが大喜びでネットを揺らし、カメラも大揺れだったため。嬉しいピンボケである。
- ひとしきり得点の余韻を楽しみ、戻って行く選手たち。早々に先制できるパワーは、トップチームにも似通ったところがある。
- 開幕戦から淡々とアベレージの高いプレーを続けている伊澤翔登。インテンシティが高く、攻撃面でもチームを手厚くサポートする。
- キーマンとして最大級の警戒心を持たれていた鈴木陽人は、常に複数マークを相手にするような試合展開の中で懸命にプレーした。
- 相手GKの処理ミスを逃さずゴールを狙う内田康介。チャンスは多く、しかし決めきれなかったことで後半にも少しずつ影響があったのは確か。
- 見た目に派手なプレーの多い大田湊真と、その周辺を補完して回る長田涼平のコンビは面白い組み合わせ。長田も対人、空中戦ともに強く、フィードも良い。
- ルーズボールに食らいつく那須奏輔。前節は早々に足がつりそうになり、持たせながらのプレーだったがこの日は違った。
- 自らもゴール前に侵入していく野田愛斗。行動範囲をどこまで広げて行けるかも、今季の彼の見どころだ。