【クラブニュース】「GRAMPUS SOCIO PROJECT」第2回SOCIOミーティング開催。深淵なるエンブレムの世界を学び、ファミリーとしての価値観が創造された。
昨日4月8日、新たなロゴ、エンブレムの共創を目的とした「GRAMPUS SOCIO PROJECT」の第2回SOCIOミーティングが開催され、50名のメンバーとクラブスタッフ、有識者、そしてクリエイティブチームがファミリーステートメント=グランパスファミリーとして大切にしたい価値観を生み出すべく活発に話し合った。計3時間と長丁場だったが、それを感じさせない学びと創造の時間に、サプライズゲストとして姿を見せたトップチームの楢﨑正剛アシスタントGKコーチも「選手よりも真剣にクラブのことを考えていただけている」と笑顔。前回と今回の話し合いをエビデンスワークとして、プロジェクトは次回より本格的な制作フェーズへと突入していくことになる。
第1回目のミーティングでは「未来新聞」という制作活動を通して次の30年後のクラブが在るべき姿、在ってほしい姿を抽出し、キーワードとして表現した。その結果を受けて今回は「ファミリーステートメント」、グランパスの”ファミリー”として共有すべき価値観や考え方を定義づけるのがひとつの目的に。そのためにまずは「ファミリー」という言葉の意味をもう一度確認し、ファンやサポーターだけでなく、チームもスポンサーも含めたすべてのステークホルダー、かかわる人々が「ファミリー」であるというところを始点に、議論が始まった。大切にしていくべき価値観や理念、スタイル、メンタリティの明文化は「らしさ」の共有や共感、今後への継承へとつむがれていくことになり、そのひとつの象徴としてこのエンブレム、ロゴの共創がなされていくことになるというもの。
プロジェクトの開始に先駆けては小西工己社長もあいさつ。先日のASローマ訪問の際のエピソードとして、サンプドリア戦に臨むチームバスを警察が先導し、市内は大渋滞になっていたが人々は熱狂していた、受け入れていたと紹介。日本や名古屋ではひとつの試合に対してそこまではまだ受け入れられにくいとし、今後の30年、100年の中でグランパスがそうなっていければという希望を口にした。このプロジェクトはその第一歩として期待していると締め、クラブとしての取り組みへの熱量は示された格好だ。
ミーティングの序盤は”座学”も行なわれた。クリエイティブチームによる「ロゴとは何か」「エンブレムとは何か」というまさしく講義が展開され、言葉の意味から中世ヨーロッパで生まれたエンブレムの歴史に展開し、日本でも家紋としての発展を見たことなど興味深い話も数多かった。その前段を経て講義はヨーロッパやJリーグにおけるエンブレムの変遷や各クラブの傾向、エンブレム自体の世界的な潮流や流行などの話へと広がっていき、現代におけるデザイン面からのエンブレムの在り方、機能、含まれる意味に今後の可能性までがわかりやすく説明された。この真剣度は間違いのないもので、新たなエンブレム、ロゴ制作という一大プロジェクトに対する制作側の熱と、そこにかかわる人たちへの本気度が伝わるようでもあった。
予備知識をインプットしたメンバーはそこからエンブレムの構成要素としてのアイデンティティ、カルチャー、機能性に何が込められるのかを話し合うことに。これが後半戦のメインディッシュだ。議論をスムーズに進めるためのヒントは「継続して大切にしていきたいところ」と「新たに大切にしていきたいところ」のふたつで、このテーマに沿ってキーワードを持ち寄り、さらにミックスさせて抽出、あるいは展開していくことでグループごとの考えをまとめていった。4~5人ずつのグループはそれぞれの意見を交わし、検討し、より収斂したキーワードや文言を練り込んでいったが、なかなかまとまりきらないグループも。そこで現れたのが、サプライズゲストとして姿を見せた、楢﨑正剛アシスタントGKコーチだった。楢﨑コーチはファシリテーターの質問に答える形で、エンブレムやクラブのアイデンティティについて次のように語っている。
「僕にとってのエンブレム…はクラブそのものだと思います。選手もみんな胸のエンブレムを触りますし、僕は昨年までアカデミーにいて、アカデミーの選手にも『ここ(胸)にあるものはなんだ』という話はしました。アカデミーの選手でさえグランパスというものを背負って戦っている。クラブにかかわるみんながそれを誇りに思って、常にグランパスの名に恥じないように闘っていた。それぐらい大事にしていたものです。
新たなエンブレムへの期待は、選手も誇りに思ってくれたり、スタッフも全員かかわってくれる人たちはみんなが誇りに思って戦ってきましたけど、この30年間よりもまた素晴らしい未来をつくれるような。さらに誇りに思ってもらえるようなエンブレムになれば良いなと思います。
グランパスならではというキーワード、難しいですけど、やっぱり自分の中ですごくしっくり来た言葉があって。それは優勝した時の久米(一正)元GMが、このボール(SOCIOプロジェクトの赤いボール)みたいに、『全体として関わる人すべてが赤い球になって戦う』と。それは言うのは簡単だけど、そうなるにはなかなか難しいのが常で。でもそういう言葉に引っ張られて、一致団結したことは思い出にすごく残っています。あとはピクシーが常に、ずっと言っていた『ネバーギブアップ』という言葉です。そのふたつの言葉はこのクラブにとってはすごく大事に、ずっとつないでいってほしいなっていう気持ちが僕にはあります」
楢﨑コーチは未来新聞の感想として”永井謙佑コーチ”や”サンティアゴ ランゲラックがゴールを守っている”など、サポーターたちのユーモアなどにも触れ、「僕のお別れ会は書いてなかったですね」と会場の笑いを誘った。10分に満たないサプライズ登場だったが、クラブレジェンドの言葉に触発されたのか、その後の議論はより集中したようにも見え、いよいよ第2回ミーティングは最終のまとめのフェーズへ。各グループでまとめたファミリーステートメントの礎となるキーワードを提出し、全員による投票を行なって意見を集約する。ここにはもうひとつのサプライズが用意されており、映像で永井謙佑、稲垣祥、森下龍矢の3人とクラブフロントのスタッフたちがこの日のミーティングと同じ話し合いを行ない、同じようにキーワードを生み出してこの投票に加えるということが発表された。
投票は熟考する者あり、インパクトやフィーリングで即決する者ありで一人3票が投じられ、人気のキーワードは4~5といったところに。この結果を受け、次は6月に第3回ミーティングが開催され、いよいよ具体的な制作のための話し合いや意見交換が始まっていくことになる。ここから先は機密事項も増えるために詳細なレポートなどはできなくなるが、今回感じたSOCIOメンバーの熱はさらに高まり、制作チームへと伝わっていくに違いない。こうした過程を経ることでクラブはより自分たちのアイデンティティを求められる姿として捉える機会にもなり、新エンブレム制作というだけに留まらないレガシーを後に残すことにもつながるはず。その意味でもこのプロジェクト、ミーティングの価値は非常に高いと感じられた。
第2回SOCIOミーティングの様子(写真)