赤鯱新報

【名古屋を見つめる冷静な視点:増川新報】第8回前編:3バックについて、その意図とチームの意思表示。

2022年も増川隆洋さんに、名古屋を見つめる別視点をご提供いただけることになった。聞けば聞くほどJリーグをしっかり見ているな…と感じる名古屋OBにしてレジェンドの一人に、今季も多くのことを学ばせてもらおうと思う。先月は氏のご多忙もあって話を聞くことはできなかったが、レジェンドマッチでは何とも元気な姿を見せてくれて懐かしくも嬉しい気持ちにさせてもらった。ちょっと時間が空いての今季第2回では、この2ヵ月の中で起きた変化についてを軸に、増川さんの持論、意見、貴重な感覚をお話しいただいた。

増川新報第8回・前編:3バックについて、その意図とチームの意思表示。

Q:先月はご多忙のところお休みとなってしまいましたが、その間にはいろいろなことがありました。レジェンドマッチとか。
「久々の豊田スタジアムのピッチを楽しみましたよ(笑)」

Q:あの試合で中学生たちはプロのすごさを感じたと思っています。それほどやれていない感覚もなかったと思いますが、ことごとくボールを支配されるというか。
「ああ、実際にそこは身体の強さ、タイミングとかもそうだし。自由にやらせたら向こうの方が前を向いて動けるから、という強みがあったんだと思うけど、こっちはそこでタイミング良くどこを使うのか、というところで勝負していたから。そこが経験っていうのかな。プロらしさというかね」

Q:だいぶ年齢が上のレジェンドたちでも、小気味よくボールを動かして中学生をかわしていける。あれも技術だけの話ではないと思うわけです。プロってやっぱりすごいと再認識しました(笑)。
「まあ、一応、くくりは“レジェンド”でしたからね(笑)」

Q:フィフティのボール、浮き球にしてもプロは身体のどこかで触ればコントロールしてしまうようなところがありましたね。
「そうだね、確かにそういうところは阿部ちゃんとか上手いよね。彼は現役だし。タキさんもめちゃくちゃ動いてた。現役時代のプレーをそんなに見たことがないんだけど、それでも前目のポジションであんなに躍動するイメージはなかった」

Q:どっちかというとデニウソンとか、ドリブルでキープしつつ前に運んでいくタイプというか。
「ああ、ドリブラーはドリブラーだったんだ。じゃあ、何となくイメージは重なるな。あの試合でもそういう部分を感じる場面は何度かあったし。けっこう走ってくれたよなあ。あの人が入ってからすごく楽になった。それまではなかなか動かないな、と思っていたから(笑)」

Q:増川さんもガッツリつぶすわけにはいかない体格差がある中で、それでもけっこう寄せるなとは思っていました(笑)。
「いや、オレの前にいたハーフっぽい子がさ、やる気満々だったのね。彼に前を向かれると、千代反田の方みたいにガンガン仕掛けられて面倒なことになりそうだと思って(笑)。前半は千代反田の方ばっかり相手の攻撃が行っていて、大変だなと思っていたし。右は最初は(飯島)カズさんで、左はオレと阿部で動ける方だったこともあるんだろうけど。中盤はよっさんと直志くんで何とかなっていた」

Q:中村さんと吉村さんはよく働きましたねえ。
「いやあ、絶対しんどかったと思う。でもひーひー言いながら、あの二人なら真面目に動いてくれると思っていたし、直志くんは相変わらず強かった」

Q:身のこなしは現役時代に近かったですよね。
「中学生のスクールもやっているって言っていたから、それもあるのかな」

Q:中盤でアウトサイドのターンを見た時、「中村直志だ!」と震えました。
「そうだよね、あの入れ替わり方。身体をグッと入れて、直志くんっぽかったよ」

Q:そこからフィードを左右に飛ばしたら現役そのままでしたね。
「でも受ける人がいないから(笑)。オレも直志くん蹴ってくれるかなって走ったんだけどな」

Q:後半のシュートはほぼ真正面に行きましたしね。
「いやあれはオフサイドなんだって(笑)。オレ3回は副審見たよ? オフサイドじゃない?って。でもオフサイドにならなかったから、仕方ないなって。けっこうそのあたりは緩くしてくれていたみたいだけど」

Q:結果的にはあのPKは必要なかったですね(笑)。
「あれは中学生がかわいそうだったね(笑)。絶対PKじゃなかった。やっていて楽しかったけどね」

Q:さて本題です。少し期間が長くなってしまったので、個別の試合というよりは大きな流れの話をしましょう。4月にあった大きなトピックとして、やはり3バックへのシステム変更がありました。変化をどう感じましたか。
「単純に思い切ったな、とまずは思ったよね。失点が増えていて、セットプレー絡みでもそれは多かったし、去年までの守りが強かったイメージはもうなくなっていたというのがその時期の正直なところで。あのタイミングは丸山くんが帰ってきて、藤井くんが試合慣れし始めて、良くなってきていた。じゃあ誰を外す? 並べちゃえ! って思ったのかもしれない(笑)。選択肢としてはね。それとも、単純に失点が増えていて、点も取れないし守れないじゃ話にならないし、まずは固めようということで、後ろは前に出られる強みのある3枚を並べたということでもあるのかなと思う。実際、そこで安定したものは何試合も出た」

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