赤鯱新報

【新春特別コラム】 “ベストピッチ”への飽くなき挑戦 豊田スタジアムと芝の続くストーリー 前編:職人であり、医者のような男たち

年間55試合という過酷なスケジュールとの戦いを経験した昨季の名古屋グランパスだが、そのホームスタジアムである豊田スタジアムもまた、多いに悩み、奮闘した1年だった。従来は二つのホームを兼用するチームだが、パロマ瑞穂スタジアムが長期改修に入り、しばらくは豊田スタジアムのみでのホームゲーム開催が続く。単純計算で倍に増えた試合数のなかで、いかに良好なピッチを保ち続けるかはスタジアム関係者たちの腕の見せ所。今回は2021年のホームピッチを支えた人々の努力と挑戦にスポットを当て、知られざる豊田スタジアムの仕事について触れていきたいと思う。

前編:職人であり、医者のような男たち

昨季は公式戦55試合を戦った名古屋グランパスは、うち24試合のホームゲームを豊田スタジアムで行なっている。ただでさえ従来の17試合からリーグ戦が19試合開催と増えているうえに、東京オリンピックや新型コロナウイルス感染症による試合延期、AFCチャンピオンズリーグによるリーグ戦日程の度重なる変更でスケジュール消化はギリギリのところがあり、現場の選手、スタッフだけでなく、多くの関係者たちが時間との戦いを余儀なくされた1年でもあった。年間56日間の隔離生活を経験した選手たちはその負荷を最も食らったことには違いないが、彼らが戦うフィールドを準備する人々にも知られざる戦いがあったことも忘れてはならない。

今回、話を聞いたのは豊田スタジアムの管理部施設管理グループ長主幹で、「ヘッド・グラウンドキーパー」の肩書を持つ田井中修さんだ。前職はゴルフ場の芝生管理者で、豊田スタジアムには2004年10月から勤務している。日本のサッカーフィールドにおけるグラウンドキーパーの歴史はまだ浅く、そのノウハウは田井中さんのような別競技、別施設での芝生管理経験者たちが実地で知見を蓄積してきたものであることが多い。豊田はさらに特殊な形状のスタジアムであることが芝管理に難題を突き付けるところもあり、一筋縄ではいかない奮闘を、田井中さんたちは続けてきた。「時には道具も自分たちで作りましたよ」と笑うベテランは、まずは2020年までの状況から簡潔に教えてくれる。

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