赤鯱新報

【高木義成通信員の岐阜通信】最終回:名古屋と “J2で” 戦う、複雑なキモチ


突然ですが、このコラムの最終回となりました。今までは別のカテゴリーにいたけど、さすがに同じカテゴリーで戦うチームになってしまうと、“間借り”もしない方がいいよね、ということで。
最後は、J2のこと、そしてFC岐阜の一員として名古屋と戦うということについて。

まず、グランパスと戦うことについては残念でしかないんだよね。これは岐阜のサポーターや、練習に来てくれた人たちにすごく言われたんだけど、「良かったね、ナリさん。グランパスと戦えるね」って。だけどさ、オレはいま岐阜の選手で、一番好きなチームは岐阜なんだけど、名古屋がJ2に落ちて嬉しいなんて気持ちは1mmもないわけ。やっぱり名古屋と戦うなら、J1で戦いたかった。だから色んな人に「良かったね」と言われて、実は最初は複雑な気持ちだった。

ただ、「何でグランパスと戦えるのがあなたたちはそんなに嬉しいの?」と聞くと、天皇杯で岐阜が名古屋と対戦したことがあったみたいで、それが今まで1回だけの公式戦での“名岐ダービー”だったっていうわけ。そこで負けはしたんだけど、その一戦が彼らにとってはとても大事なことで、だからこそ名古屋と同じカテゴリーで戦えるのが嬉しいと言うんだよ。その気持ちはオレは理解できた。オレの名古屋に対する気持ちとは違うけど、その想いは尊重すべきものだなと思った。

それと思ったのは、岐阜には「J1は名古屋を、J2は岐阜を応援しよう」と考えてる人が潜在的に多いんじゃないかということだね。だから面白いし、嬉しかったのは、名古屋の試合を見て、岐阜の試合を見に来てくれるお客さんもけっこういるってこと。これは本当に嬉しかったな。練習に会いに来てくれる人からも、「名古屋の試合を見てから、岐阜の試合も見に行きました」ってよくいるんだよね。

今季の対戦を考えてみると、もう知っている選手は半分以上いなくなっているし、名古屋と戦うのが楽しみというよりは、サポーターの皆さんとスタジアムでまた会えるのを楽しみに考えているかな。もちろん、ナラさんとピッチで再会できるならば、それはすごく嬉しいことだけどね。でもね、ナラさんに言っといてほしいのは、けっこうプライベートでは会ったりしているから、ピッチで会えるのは嬉しくても新鮮味はないです、と(笑)。

そうそう、松っちゃん(松浦紀典ホぺイロ)のことにもやっぱり触れておきたい。オレね、今季の名古屋を見る時、スパイクを見ちゃうと思うんだ(笑)。だって自分のクラブの選手のスパイクですら見てさ、小姑みたいに「お前さ、靴は磨けよ」って言ってるんだもん。オレは松っちゃんがいるクラブから岐阜に来て、自分で何とか松っちゃんに近いレベルで磨けるようにとやってきたからさ。もちろん岐阜の選手は松っちゃんの仕事を知らない。でも自分の商売道具をちゃんとできないのは…古い考えかもしれないけど、それじゃ部活と変わらないでしょ、と思う。

オレのスパイクなんてチームで一番綺麗じゃないかな。試合前日にそこまで準備するのが今のルーティーンになっているからね。若い選手は試合前のロッカールームで磨いている選手もいるけど、オレはあまり好きじゃないかな。で、そう言うと「オレはこれがルーティーンなんです」って言われたりしてね。コノヤロー!って思ったりするけど(笑)。いなくなってしまったものは仕方ないけど、松っちゃんがいるのといないのとでは、大きな違いがあるとオレは思うな。スパイクの紐を通しておく作業ひとつでも、嫌いな人は嫌いだからね(笑)。

名古屋はJ2を初めて戦うわけだけど、サッカー以外での厳しさもJ2にはあるからね。サッカーの質はもちろん違うし、ビックリするようなシュートが飛んできたかと思えば、ビックリするようなミスがあったりもする。それで助かる時も助からない時もある。上位と下位の対決では下位のチームがまるでレアル・マドリードみたいな輝きをもった強いチームになったりする。ゴール自体はとんでもないシュートが多いからね。GKの負担は大きいよ。優勝した時の名古屋の守り方だったらそれはそれで良いと思う。打たれるなら、しっかりコースを切っておくとかね。でもオープンな守備をするとすごいのが飛んでくる。

何というか、違うリーグみたい。J1がJリーグだとしたら、J2は違うリーグなんじゃないかなと思う。技術よりも思い切りや勢い、フィジカルベースのサッカーと言えばいいのかな。J2の試合を見た後にJ1を見ると、やっぱり技術の差が見える。トラップの置き所一つとっても違う。降格したチームだって、本当に上手い。レフリーも若いし、ピッチの質もJ1に比べるとやっぱり劣る。

繰り返すけどJ2での対戦は複雑な気持ちだよね。でも、その気持ちを抱えながらも試合になったら全力で倒しに行くよ。ブーイングも大歓迎だから。まあ、拍手も大歓迎だけど(笑)、選手としてはブーイングが欲しいかな。去年、東京Vのアウェイの時なんて、相手ゴール裏から「義成ー、いつ帰ってくるんだー!?」って温かい声が聞こえてきてね。そんなのばかりでも面白くないからさ。どんどんブーイングしてくださいよ。オレも“名岐ダービー”にコンディションのピークを合わせて、勝ちに行くので。

それでは、またスタジアムで会いましょう! 高木義成でした!!

reported by 今井雄一朗

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